魔女の弟子-1

 伝説に曰く、大魔女トラヴォルヴィッチは、天候を操り、心を操り、魔を支配すると言う。
 その力、想像を絶するがゆえ、人々から敬われる一方で畏怖もされた。
 それは、魔女は、力を貸す代わりに・・・その代償を求めるからだ。
 忘れるなかれ、魔女の力は両刃の刃。
 特に彼の者、その優れたる力ゆえに、代償も大きいのである。


 今から、三十年程前の事だ。
 大魔女トラヴォルヴィッチが住んでいるとゆう、広大な森から東へ二つ程国を挟んだ所に、アスリードと呼ばれる王国がある。
 その国では、厄介な疫病が流行っていた。
 それは、空気感染をおこして、瞬く間に国中へと広がっていったのである。
 人のみならず、動物や植物までもが、この疫病にかかった。
 しかも、それは癒す事の出来ない病だった。
 そんな時に現れたのが、トラヴォルヴィッチだった。
 年の頃、20代半ばの女が悠々と歩いて現れたのだ。疫病の事など、気にする風もなく。
 時の王は、直ぐにその女を王城へと召還した。
 そして、問いただした・・・何故、この国へと入ってこれたのか。何故、疫病に侵される事なく、無事でいられるのかを。
 女は、自らが魔女である事を明かして、さらに魔法でその身を守っている事・・・そして、自分ならこの疫病を治す事も可能である事を伝えた。
 王や大臣達の間にどよめきがあがった・・・これで国が救われる、そう思ったのだろう。
 しかし、魔女は条件を提示してきた・・・いずれ王の直系に生まれる最初の姫君を頂くと。
 時の王には、姫などいなかったからとゆうのも理由にあるだろうが・・・人ひとりの命で、国が助かるのである。
 王は、すぐにこの条件に飛びついた。
 魔女は、契約がなされると・・・外へと出て、腰元からひょうたんを取り出し空へと掲げて、呪文を唱えた。
 すると、ひょうたんの口から赤い粉のような物が噴出し、国中へと広がったではないか。
 その赤い粉は、疫病を殺して、人も動物も植物も全てを浄化したのである。
 こうして、国は疫病から救われた。
 その後、魔女は、こう言い残して去っていった。
 「姫が生まれて10年と少しの間は共に過ごさせてやろう・・・これは、私の情けだ。だが忘れるな、私がこの国を救ったのだ・・・そして、その代償は支払わらねばならぬ。時が来たら私の弟子をよこすから、そいつに姫を渡せ。魔女の契約・・・違えられる物とは、思わぬ事だ。」

 そして後には、魔女の名だけが残った・・・伝説の大魔女トラヴォルヴィッチの名が。


 さて、それから時がたち、17年程した頃の事だ・・・
 あの魔女と契約した王の息子が新たな王となり、彼と后は国民に慕われる良き王となっていた。
 しかし、問題が浮上した。
 二人の間に、娘が生まれてしまったのである。
 王も国民も、絶望した。
 待ちに待った待望の二人の子が、娘だったからである。
 魔女は言った、姫を頂くと。
 恐怖にかられた王は、暗殺者を雇い、賞金をかけて・・・大魔女トラヴォルヴィッチへとけしかけた。
 しかし、どれほどの技量を備えた者も、どれほど逞しい体を持っている者でも・・・魔女の元に辿りつく事が出来る者はいなかった。
 森を抜けられる者がいなかったのである。
 どれほど歩き続けようとも、何故か魔女の元に辿り着く事は出来なかった。
 そうして、10年・・・王は、姫君を守るために、兵を集め、要塞を築く事にした。
 魔女と弟子を討ち取るために。

 それから数年後、この国に一人の男がやってきた。
 丁度、あの魔女のように。



 「・・・この男がそうか?」
 豪奢な身なりの男が、顎で指して兵達から確認を取っている。
 「魔女の弟子と言うからには、てっきり女かと思っていたのだがな。」
 意外そうな声で、男は手枷を付けられて寝転がされている男を見る。
 「っは!本人が、魔女トラヴォルヴィッチの弟子と名乗り、大胆にも王城正面から忍び込もうと、やってきました所を捕らえました!」
 兵は、敬礼をしながら、これから賜る褒美を思い顔をにやつかせる。
 その時、手枷をはめられた男が起き上がり、豪奢な服装の男を見上げる。
 「あんたは?」
 「貴様っ!無礼であるぞっ!!」
 兵士は、覚えをよくしてもらいたいのか・・・持っていた槍の柄で、不必要な程の力で殴りつけた。
 鈍い音と共に、手枷の男は跳ね飛ばされる。
 「つぅー、大体、いつ僕が忍び込もうとしたって言うんだ。番兵をしていあんたに言っただろ。僕は、トラヴォルヴィッチ様の弟子で、契約を果たしに来ただけだと。」
 「五月蝿いっ、黙ってろ!」
 再び鈍い音が、響き渡った。
 「まぁ、まて・・・こやつがどれほどの悪罪を持っていようとも、今ここで死なれても困るのだ。こやつには、トラヴォルヴィッチの居場所を吐いてもらわねばならぬのでな。」
 男は、そう言うと、兵に褒美の金貨を二、三枚与えると、自分の後ろに控えていた騎士達に連れていかせる。
 「お主の功績は、しかと国王に伝えておこう。」
 「っは!ありがとうございます、大魔法師ジョン・ブルリック様。」
 そう言って、兵士は大魔法師と名乗る男に敬礼をした。

 魔女の弟子と言う男が、中庭で騎士達に囲まれて、剣を突きつけられている。
 「・・・この国じゃ、槍で殴りつけて、剣を突きつけるのが礼儀なのか?」
 騎士の一人が、剣に力を込めた。
 うっすらと、男の肌に血が滲みでる。
 「余計な口は、きかないでおくことだ・・・命が欲しければな。」
 その台詞に怖気ついたわけでもなさそうだが、男は肩をすくめると、目を瞑って時が来るのを待った。
 「そ奴か、魔女の弟子だとか言う男は・・・」
 中庭を一望できる城のバルコニーから出てきた一人の男が、よく通る透き通った声で階下の者達に声をかけた。
 「そうでございます、国王陛下。」
 剣を突きつけている者達以外は、全員一斉に平伏した。
 その内の一人が進み出てきた。
 豪奢な服装の大魔法師である。
 「おおっ、ジョンよ、そなたがそやつを捕らえてくれたのだな。」
 「はい、国王陛下。我が魔法の力を持ってすれば、こやつ如き敵ではありません。」
 大げさな振る舞いで、ジョンは国王に自分の力を誇示した。
 更に、ジョンの演説が続こうかとした時、魔女の弟子が口を開いた。
 「お前が、現国王・・・クライス・アスリードか。」
 そのな口のきき方に、騎士達がいきり立つ。
 「貴様っ、陛下に向かってのその口のききようっ、無礼であるぞ!」
 「無礼は、そちらも同様だ!遠方より旅して来た者に対してのこの仕打ち、礼儀を知らぬ者に礼を尽くす必要などない。」
 騎士の一人の激昂に、魔女の弟子はそう返した。
 「っぐぅ、く・・・き、貴様ぁっ」
 「待て、皆の者・・・確かに、我らは礼を尽くしてはおらんのだから、この男の言い分ももっともだ。」
 クライス王は、片手で騎士の怒りを静めるように言い渡す。
 「・・・は。」
 騎士が、平伏したのを見た後。
 「だがな、お主があの魔女トラヴォルヴィッチの弟子だとゆう証拠が何処にある?それが確認出来ねば、姫を渡す事は出来ん。」
 魔女の弟子は、苦笑しながら。
 「そこの大魔法師とかゆう男は、僕に師の場所を吐いてもらわないと駄目だとか言ってたけど?」
 「ジョンッ!」
 「も、申し訳ございません、陛下!」
 大魔法師が、バルコニーにいる王に向かって青ざめた顔で平伏する。
 「まぁまぁ・・・そっちの状況は、わかった。とりあえず、証明はするよ・・・この手枷、外して貰えると嬉しいんだけど。」
 王が、その許可を与えると、騎士の一人が手枷を外す。
 「やれやれ・・・たく、師匠ももう少し考えて行動してくれれば、僕も楽なのに・・・」
 ぶつぶつ言いながら、腰元のひょうたんを掲げる。
 「あんた、これが何かわかるか?」
 バルコニーにいるクライス王は、それを目を凝らして見つめた。
 「・・・ひょうたんか?」
 「そうだ・・・あんたが、三十年程前に見た・・・・・・あれだ。」
 伝説に残る、赤い粉を噴出したひょうたん。
 「そ、それが、どのような証明に・・・」
 王は、少し顔を青ざめさせながら、魔女の弟子に向かってそう言い放った。
 「それは、あんたの真実の言葉じゃない筈だ。あんたは覚えている、このアイテムの力を・・・」
 王の動揺に、騎士達にもどよめきが走る。
 「さぁ、どうする・・・力を示すか?この中に封じられた、災厄の病を。」
 「ま、待てっ!わ、わかった、お前を魔女トラヴォルヴィッチの弟子と認めよう。」
 「それは、ありがたきしあわせでございます、クライス国王陛下。」
 慇懃無礼に、魔女の弟子は頭を垂れる。
 「仕方あるまい・・・姫を渡そう。」
 「こ、国王陛下っ!?」
 「陛下っ、お辞めください。」
 「そうです、我らが一命にかえましても、こやつと魔女めは必ず我らの手で!!」
 (随分と、人気があるんだな・・・ここの姫は。)
 だが、王は無念そうにしながらも、騎士達を止める。
 「お前達の気持ちは嬉しい、だが・・・一人のために、国の命運をかけるわけにはいかんのだ。」
 王は、姫を呼び、バルコニーの前へと立たせた。
 お姫様の顔は、可哀想な程に青ざめている。
 「これが我が娘、フィリア・アスリードである。」
 だが、魔女の弟子は一つため息をついたに過ぎなかった。
 「まぁ、下手な猿芝居はともかく・・・僕が偽者にひっかかるとでも?」
 「に、偽者などではない!」
 「・・・だから、僕は師からどんな人か知らされているんだから、無駄なんですよ。例え、どれほど外見が似通っていても、魂の色までは誤魔化せないんだから。」
 王が、顔色を変えて片手をあげた。
 「抜刀!!」
 全員が、剣を引き抜く。
 「なれば、後は武力で方をつけるしかあるまい・・・お前を拷問にかけ、魔女の場所を吐かせてやろう。」
 魔女の弟子は、また一つため息をつく。
 「・・・わかりました、ならば契約を解除しましょう。全て、無かった事にするんです。」
 「よ、よいのか?」
 王が、意外そうな声をあげた。
 「ええ、姫君を我が師が召し上げる事もなく、そして疫病も元のままこの国に蔓延する事となりますが。」
 「そ、それは・・・」
 「クライス王・・・我が師は、貴方と貴方のお父上に言った筈です。魔女の契約、違えられるものではないと。」
 「お主は、死を恐れてはおらんのか?」
 王の言葉は、脅しだった・・・魔女の弟子の言がそうだったように。
 ただ、こちらは直接的な・・・言う事を聞かねば、殺すと・・・怒気を含めている。
 「いいや、死ぬのは恐いな。それに、僕の力じゃ確実に殺される。」
 平然と、魔女の弟子はのたまう。
 「だけど、うちの師匠が、今、この瞬間を見守っていないと思うのか。契約を違えれば、災いは確実に降りかかる。師の力をもってすれば、国一つ滅ぼす事など・・・造作も無き事。僕を脅して居場所を吐かせても、騎士達が詰め掛ける前に、この国は確実に滅ぶ。」
 騎士達は、王を見上げ判断を仰いだ。
 ここで、この男を殺せば・・・確実に国は滅ぼされる。
 それは、契約を違えようとゆう行動に他ならないからだ。
 騎士達とて知っている、魔女の・・・特にこの国の救主にして畏怖されるべき存在、大魔女トラヴォルヴィッチの恐るべき力は。
 「なぜだっ、何故私の娘でなければいかんっ!?」
 「それをいうなら、何故そこの影武者のお嬢さんでなければならない・・・とも言えますよね。まったく、何も関係の無い者に責務を負わせようなど、王にあるまじき行動だ。」
 「まったくもって、その通りですわ。魔女のお弟子様。」
 城内から、白いドレスを着た少女が現れた。
 「フィリアっ!?」
 クライス王が、バルコニーの柵に手をかけて、叫んだ。
 「お父様、何故私を部屋に閉じ込めたりするのです!しかも、何の罪も無い者に、身代わりをさせるなど・・・」
 怒り心頭で、フィリアは父親をどなりつけた。
 「私達王族は、民の良き見本となれと教えてくださったのは、お父様ではございませんか!」
 「し、しかしだなっ」
 王が、尚も言い募ろうとするのを、フィリアが止めた。
 「お父様・・・いいえ、陛下。もう既に、契約は成っておるのです、ここで我らの方が契約を違えれば、魔女の怒りを買うのは必至。わかっている筈です・・・あがらうすべなど、無い事に。それに、私達王族は、このような時のためにこそ、存在しているのです。国を守るための責務を負っているからこそ、民も私達に尽くしてくれるのですから。」
 フィリアは、見下ろしている父親を見た後・・・魔女の弟子の前までやってくる。
 騎士達は、自然に道をあけた。
 「初めまして、私は、フィリア・アスリード・・・アスリードの王の娘でございます。」
 フィリアは、ドレスの裾を摘み、儀礼通りの挨拶をする。
 「私の名前は、マーク・・・偉大なる魔女・トラヴォルヴォッチ様の末の弟子にあたるものです。」
 マークは、膝をつき頭を垂れた。
 「貴方の、誇りある決意に・・・今は唯、敬意を表させて頂きとうございます。」
 マークの声は、震えていた。
 それは、いささか大げさすぎる程に。
 (もしかして、泣かれていらっしゃるのかしら・・・)
 フィリアは、この時初めて、この男に違和感のようなものを受けた。


 「フィー・・・やはり、行ってしまうのですね。」
 クライス王の后・レイチェルが悲しげに目元を伏せる。
 「お母様・・・そんな悲しげなお顔をなさらないで下さい。何も、死んでしまうわけでは、ないのですから。」
 「ああ、フィー、そんな恐ろしい事を言わないで・・・」
 レイチェル王妃は、フィーの体を抱きしめてしくしくと泣く。
 「お母様・・・お母様も、マーク様のお話をお聞きになったでしょ。私には、魔女としての高い適正があるから、トラヴォルヴィッチ様も弟子として、手元に置きたがっているのだと。」
 もっとも、フィリア自身は、その言葉自体にどれほどの信憑性があるか、わからなかったが。
 「私は、本当は、魔女などにさえ、なって欲しくないのです。」
 フィリアは、顔を振って嫌がる母を見て、そっとため息をついた。
 (泣きたいのは、自分だって一緒なのにと・・・)
 「お母様、もう泣かないで下さい。きっとまたお会いできますわ・・・だって、これでお別れだなんて、寂しいですもの。それに、これから生まれてくる弟や妹達にも会いたいですしね。」
 フィリアは、臨月に近い母のお腹をさすり、母を励ます。
 レイチェル王妃は、もう一度フィリアの事を抱きしめる。
 「フィー、愛してます。ずっと、ずっと・・・例え、貴方がどこにいようとも・・・。例え、貴方が何者に変わろうとも、私達の娘なのですから。」
 王妃は、そう言って涙を一筋流し、娘にキスをした。
 (私もです、お母様・・・ずっと、ずっと愛しています。)
 いつの間にか、フィリアも母の胸の中で泣いていた。
 彼女だって、辛くない筈がなかったのだ。
 唯、泣くための相手がいなかっただけ・・・声を押し殺して、ずっと溜め込んでいたものを、全て吐き出すかのように・・・彼女は泣いた。

 「姫様・・・」
 「マーニャ・・・もしかして、聞いてたの?」
 フィリアは、少し顔を赤らめて恥かしそうにする。
 「も、申し訳ございません〜。ですが、ですが〜」
 マーニャと呼ばれた侍女は、号泣しだした。
 「マ、マーニャっ!?ほ、ほら、泣き止んで・・・ね。」
 フィリアは、泣き出したマーニャの背をさすって慰める。
 もっとも、それは逆効果だったようだ・・・その優しさに心打たれたマーニャーは、更に泣き声を高くした。
 「姫様っ!!」
 マーニャは、何かを決意して、涙を拭いて顔をあげた。
 「な、なに?」
 「私も、姫様について参ります。もう、姫様一人に、辛い事を押し付けて置くことは出来ません。どうか、どうか、マーニャもお連れ下さい。」
 そう言って、マーニャは平伏して、フィリアの手を握る。
 「そ、そんな事言われても・・・」
 フィリアは、思わずふって沸いた問題に嫌な汗を流した。

 「・・・で、彼女も一緒に連れて行きたいと?」
 剣呑な目つきで自分を見るマーニャをみながら・・・マークは、少しだけ思案顔になる。
 「あの、駄目でしょうか・・・」
 やはり、一人では心細い気持ちもあった。正直言えば、マーニャが付いてきてくれるというのは、本音を言えば嬉しい出来事だ。
 だから、マーニャに押されるままに、眠りにつこうとしているマークの部屋へと押しかけて、彼に了承を取りにきたのである。
 しかし、主人が何故了承をこの男から得なければならないのか・・・理性では理解しているが、感情がそれを許さず、マークに対して剣呑な目つきになっているのである。
 「随分と、貴方は慕われているのですね・・・フィリア姫。」
 「え!?あ、そうでしょうか。」
 急に話題を変えられて、フィリアは少し戸惑う。
 「ええ、昼間の騎士達しかり、彼女しかり・・・彼女らにとって、貴方はどうやら誇りであるらしい。」
 マーニャは、その言葉に頷き。
 そして、マークが、何かを懐かしむような顔を見せる。
 「いいでしょう、あまり大人数なら断りましたが・・・一人くらいなら、問題もないでしょうし。」
 マークは、微笑みを見せて、フィリアとマーニャに頷いてみせた。
 「きゃぁー♪やったわ、マーニャ。一緒に行っていいんですって。」
 「はい、姫様♪」
 二人の明るい声が室内に木霊する。
 「それでは、マーク様。さっそくマーニャにも旅の準備をさせますので。」
 フィリアとマーニャは、同時に一礼して部屋から出て行く・・・のを、マークは途中で止めた。
 「姫様、申し訳ありませんが。準備が終わりましたら、後ほど私の部屋へ来て下さいませんか。一つ、しなければいけない事がありますので。」
 「今では、いけませんの?」
 不思議そうに、フィリアが首を傾げる。
 「ええ、必ずお一人で来て下さい。・・・お一人でですよ。」
 「・・・はい、わかりましたわ。」
 そう言って、フィリアが微笑んだ。
 マークは、少しだけ辛そうに彼女の微笑みを見つめていた。



 「フィリア・アスリードです・・・マーク様、よろしいですか。」
 ドアの前に立ち、マーニャと付いて来ていた侍女達を帰らせると、ノックをして声を掛けた。
 「ああ、入って来て下さい。」
 マークが、中からそう答える。
 「・・・失礼します。」
 フィリアは、中に入るとマークの姿を探した。
 「ああ、こちらです、姫。」
 マークは、ベットの上で、体中に不可思議な文様を描いていた。
 「あの・・・」
 「扉の鍵は閉めてきました?」
 「え、いえ。」
 ちょっと理解を超えた状況に、フィリアが戸惑っているのを感じたマークは、短い呪言を唱える。
 「・・・・・・・・・ディ・シーク」
 パンとベットの上を叩くと、そこから光りの影とも言うべき物が生まれて、それが扉に向かって走りぶつかると、魔方陣を描いて消える。
 「これが・・・魔法・・・・・・」
 初めて見る力だった。
 少なくとも、大魔法師を名乗っているジョンには、見せて貰った事がない。
 「そう、これが魔法です。・・・もっとも、師匠に言わせると、僕が使う力なんて、唯のまやかし程度だそうですけど。」
 「あの、何をなさっているのですか?」
 喋りながらも手を止めないマークを不可思議に思い、フィリアは不思議そうに見つめる。
 最初は、戸惑いが大きかったが・・・慣れてくると、好奇心が勝った。
 「これは、魔力を効率よく高めて制御するための物です。もう少し技量のある者なら、必要ないのですが。」
 そう言って、マークが苦笑する。
 フィリアは、珍しそうに見つめながら先程の魔法の事も聞いてきた。
 「あれは、何かを簡易的に封印するための魔法で、もっとも低いレベルに相当しています。」
 「・・・封印?」
 フィリアが、首を傾げる。
 「昔話にも出てくるでしょう、勇者が悪魔を封印したとか・・・あれの力が弱い物です。今の場合でしたら、部屋と廊下の間を隔絶・・・扉に鍵をかけたと理解して貰えれば。」
 「そうなんですか・・・ところで、何故そんな事を?」
 フィリアは、感心したような声をあげた後・・・その魔法を使った意味がわからずに、疑問の声をあげる。
 マークは、一瞬言いにくそうな顔をした後、口を開く。
 「それは・・・途中で入って来られたり、外に声が漏れたら、少々困った事になると思うので・・・・・・」
 「困った事?」
 眉を寄せて、フィリアが尋ねる。
 どうやら、何もわかっていないらしい・・・マークは、今からする事が、どれだけ外道と称されるような行為であるかを判っていたし、罵られる覚悟もしていた。それでも、こうも自分を全てでは無いにしても、信頼しているような相手に行為の宣言をするのは、流石に躊躇いが生まれる。
 (それでも・・・しとかないと・・・・・・)
 それが、必要な事だから。
 一度、息を大きく吸うと・・・マークは神妙な顔になる。
 いや、どちらかと言えば、赤い顔だ。
 「姫様・・・重要なお話があるのですが・・・いいですか。」
 「え、あ、はい。」
 何故か、マークのその様子にフィリアも顔を赤くしてしまった。
 (もしかして・・・これって、告白!?)
 何せ、今までは、結構お転婆とか言われてきたとはいえ、やはりそこはお姫様。身分の違いが・・・とかで、告白などされた事がない。
 舞踊会とかで、ダンス程度なら誘われた事もあるが・・・それは、あくまでアスリードの姫としてだ。
 それに、大魔女トラヴォルヴィッチに成長したら連れて行かれると、平気で周りの人間は囁いていたものだ。
 そんな人間に、そういった話など、舞い込んでくるものではない。
 しかし、フィリアも年頃の女の子だ、そういった事に憧れる。
 ロマンスノベルも幾つも読んだ。
 そんな甘い恋にだって、憧れている。
 それに、これからはお姫様ではなくなるのだ・・・豪華なドレスも綺麗なアクセサリーも着けられなくなる代りに、身分など無くなる自由が手に入るのだ。(魔女になるらしいが・・・)
 そういった事を考えた上で、その台詞を考えれば・・・フィリアも結構ドキドキしてしまう。
 マークは、確かにこの国にとって災厄とも言える人物だが。
 それは、かつて救って貰った代償であるし・・・王族とは、責任をとるためにいるものだと、フィリアは考えている。
 それに、マークは、唯の使いであるのだから、あんまり攻めるのは筋違いだと思う。マーク自身、国王の脅しとも取れる態度には、強硬に対応したが・・・他の時には、出来る限りフィリアや他の者達に気を使って話しているのがわかった。
 だから、フィリアンは、周りがマークに憎悪をぶつける中、あまり悪い印象は持っていなかった。
 寧ろ、彼が、フィリアに話しかける時の真摯な態度(ともすれば、少し大げさな程の時もあったが。)は、彼女に好印象を与えていた。
 「あの、今から僕が話す事は・・・その・・・かなり・・・あれなんで・・・怒らないでくださいね。」
 「は、はい。」
 フィリアの顔も途端に赤くなった。
 (ど、どう答えよう。)
 付き合って下さい・・・などと言われても、まだ彼女はマークの事は何も知らないのだ。迷って当然である・・・マークの話が、そうゆう話なら。
 (ま、まずは、お友達から・・・よね?)
 緊張して、喉が渇くのをフィリアは感じた。
 だが、マークの台詞は、フィリアの想像を絶するものだった。
 「姫、僕に抱かれて頂かないといけません。」
 「は、はい、でも、まずお友・・・抱かれる・・・・・・・・・」
 フィリアは、城下町では、よくお城を抜け出して遊びに来るお転婆姫として有名だ。
 そして、彼女は、侍女達や城下町の子供達から、そういった隠語も耳にした事があり、意味も知っていた。
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!!」
 バチンっ!
 盛大な平手の音が、室内に響きわたる。
 「この私を、侮辱するおつもりですか!」
 真っ赤な顔で、彼女は怒りを表す。
 少し前まで・・・「結構、いい人かも♪」とか「告白されちゃうの、ドキドキ♪」などと思っていただけに、怒りが倍増である。
 「ち、違う、お、落ち着いてっ!」
 マークは、悲鳴まじりの声をあげた。
 「このような事を言われて、我慢など出来ますか!」
 「違うんだ、これには理由が、理由が、あるんだっ。」
 「理由っ・・・くだらない理由でしたら、許しませんよ。」
 既に、恐ろしい魔女の弟子だとか、そういった事は彼女の頭の中には存在しなかった。
 「その、師匠の要求に答えるには、高い魔力が必要なんです。貴方の場合、器は大きいのですが、肝心の中身の方が・・・それに、今のままでは、命にかかわりますので。」
 「・・・それで、何で・・・その、そういった行為に走る必要になるんですか。」
 ぶすっとした表情で、フィリアはマークを見る。
 マークは、短く息を吐くと。
 「性行為を行う事によって、魔力を高める事が出来るんです。元々女性は、高い魔力を秘めているものなんですが・・・それは、女性が子供を、生命を生み出す能力を持っているからで。性行為・・・すなわち子供を作ろうとする行為は、魔女にとっては、生命を生み出す代わりに魔力を高める行為に代わるんです。貴方は、まだ魔女ではありませんが、僕はそれを誘導する事が出来ますので・・・」
 マークは、息もつかずに一気に言い切った。
 途中で止めると、彼女が何を言い出すかわからなかったからだ。
 「・・・他に方法は・・・・・・ないんですね。」
 マークが、途中で悲しそうな顔に変わったのを見て、フィリアはあっさりと嘆息して、頷いた。
 マークには、それが少し意外のような感じがした。
 「えっと・・・」
 「別にそんな意外そうな顔しないでも、いいです。私は、魔女にさらわれるお姫様ですよ。最初っから、普通の恋なんて期待してませんでした。もしかしたら、生贄にされるかもって思ってましたもの。」
 フィリアは、苦笑しながら。
 「それに比べたら、だいぶましです。それに・・・元々、王族には恋愛結婚なんて望める筈も無い事ですし。こんな風に抱かれる事だって、最初っから覚悟しておかなければならない事ですから。」
 何処となく、諦めたような表情。
 その表情は、やけに諦める事に対して、馴れているような気がした。
 「・・・その、すみません。」
 マークが顔を俯かせる。
 「でも・・・しないと、後から貴方が苦しむ事になるから。」
 二人は、向かい合ってベットの上に座っていたが・・・マークは、自分の体に化粧をし終えると。フィリアへ向かってゆっくりと近づいていった。
 そのまま、抵抗のないフィリアの体を押し倒す。
 「だから、すみません。」
 マークは、そうもう一度謝罪を口にした。


 押し倒されたフィリアの蜂蜜色の長い髪が、放射状に広がった。
 「出来るだけ、優しくしますから。」
 だが、フィリアは、その言葉には何も返さず口をつぐんだ。
 マークの手が、フィリアの体をドレスの上からまさぐり始める。
 柔らかく、光沢のあるシルクのドレスは、フィリアの体の柔らかさを、殆ど損なわずにマークへと伝えてくれる。
 両手で、胸を二、三度揉んでから、その手を体中を撫でるように這わせて、フィリアの反応を見るが・・・彼女は、マークの方は見ようともせず、唯下唇を噛んで顔を横に背けていた。
 一瞬、マークは悲しそうな顔をしてから・・・再びドレスの上に手を這わせる。
 それは、段々と下の方へと来て、スカートを持ち上げてフィリアの下腹部を露にした。
 「きゃぁっ」
 フィリアが、短く悲鳴をあげる。
 そこは、ショーツと、ガーターベルト、ストッキングに守られていた。
 マークは、唯一つ肌を露出させている太もも部分に手を這わせた。
 その白く、一度も日に焼けたことが無いような肌は、すべすべしていながらが、滑らかで、しっとりと吸い付くような・・・極上の絹を思わせる。
 少なくとも、彼が相手をした事がある女の中に・・・これほど素晴らしい肌の持ち主はいなかった。
 マークは、我を忘れて両手で内腿をさすっていた。
 一方、フィリアの方は、とても情けない気分に陥っていた。
 される事は仕方がない。でも、絶対に声など出すものかと・・・フィリアは、押し倒された時に考えていた。
 「いや」だの「やめて」だのは、絶対に言わないと決めていた。
 それが、フィリアに残された、最後の意地でもある。
 これは、好きあってする寝所での夜伽ではないのだから。
 行為が終わったら、自分は颯爽と起き上がり、ドレスを着なおして、こう言ってやるのだ『それでは、マーク様。また、明日お会いしましょう。』。そう言ってから、一礼して小馬鹿にした笑みを浮かべてやる。
 そう決めていたのに・・・今はもう、その決意が萎えそうになってきている。
 上半身を触られている時はまだ良かった・・・でも、その触れる行為が下半身へ移ってから、様子が変わってきている。
 そう、何かに憑りつかれたかのように、マークは自分の足に手を滑らせている。
 それに、下着越しだとはいえ、下腹部を男の前で露出させている姿は、やはり屈辱に近い。
 フィリアは、羞恥の感情に見舞われて、顔を真っ赤に染め、きつく胸の前で手を組み合わせた。
 そんなフィリアの様子に気づく事なく、マークはフィリアの体を反転させてうつ伏せの格好にする。
 「うぎゅっ」
 フィリアは、行き成りのその行動に、潰されたような声をあげた。
 「・・・大丈夫ですか?」
 「・・・・・・・・・・・・はい。」
 その答えで安心したのかどうかはわからないが、マークは再び行為を再開し始める。
 フィリアをうつ伏せにした後、膝を立たせてお尻を持ち上げさせる。
 スカートは、重力に逆らえずに下へと落ちて、フィリアの上半身を隠すように垂れ下がった。
 反対に、下半身が、剥き出しになる。
 フィリアを、先程以上の羞恥が襲った。
 マークがした事とはいえ、ヒップを男に向かって突き出している姿など・・・はっきりいって、想像出来ない。
 顔をベットに埋めて、両手でシーツを握り締めて、羞恥に耐える。
 マークの舌が、フィリアの内腿を舐めた。
 ぞっとした悪寒が、フィリアの背を走った。
 マークは、舌を這わせながら、左手でフィリアの体を固定して、右手をお尻の上に滑らせる。
 這わせた舌は、段々と上の方へと上がっていき・・・それが、秘部の部分まで到達した。
 フィリアの体が一瞬ぴくりと震え、お尻がふるんと揺れる。
 すると、マークの舌が、フィリアから離れた。
 彼女の内に安堵の火が灯りそうになった瞬間、それは一瞬にして吹き消される。
 マークは、鼻頭をフィリアの秘唇があると思われる場所に、ショーツ越しにつけて、その場所をなぞり始めたのだ。
 「ひぃっ・・・!?」
 フィリアが、反射的に足を閉じようとするのだが・・・マークは、それよりも早くに太ももを両手で捕らえて、それを許さない。いや、そればかりか、彼女のすべすべとした肌を再び撫で始めたではないか。
 マークは、まるで犬のようにくんくんと鼻頭をつきつけて、ショーツ越しに秘唇をなぞる。本当に匂いを嗅いでいるわけではないだろうが、こうやって自分の股間に鼻を突きつけられている姿は、本当に犬にでもなったようで・・・それが、フィリアの羞恥を煽った。
 それでも、悲鳴も泣き言も言わずにじっと耐えているその精神力は、たいしたものだ。ちょっと声を漏らす事はあっても、殆ど声らしい声はあげていない。
 「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・」
 マークは、息を荒げながら、その行為に没頭する。
 彼女から発する女性の匂い・・・特に少女特有の甘ったるい感じのする匂いに囚われたかのように、マークは鼻で彼女を突きつつも、止められなくなっていた。
 鼻から出る息が、フィリアの太ももと秘所を微かにくすぐり、体に痺れを残す。
 その行為は、確かにフィリアに羞恥と嫌悪感をもたらすだけのモノだったが、同時に彼女が意識しない所では別の感覚を植え付けていく。
 声も動きも示さない彼女だったが、時々、ぴくり、ぴくりと体を振るわせるのである。
 フィリアは、まだ年端もいかない少女だ・・・その純真可憐な筈の少女が、自分の愛撫に反応して体を震わせている。
 いやでも、マークの体が興奮してくる。
 だからこそ、余計にその行為に没頭してしまった。
 しかし、マークの動きに少し変化が現れ始めた。マークは、鼻を当てるのを止めて、唇を這わせるようになってきたのである。
 その違いに、最初はフィリアも気づいてはいなかったのだが・・・マークが、下着越しに舌で秘唇を舐め始めると、そのなぞる感触で流石に気づいて、埋めていた顔で自分の股越しにマークを見た。
 それを見たとき、フィリアの中で今までで最大級の悪寒が走る。
 (こ、この人、何やってるの!?)
 下着越しだとはいえ、この男は本来お小水を流す排泄器官を舐めているのだ。
 フィリアは、そんな事をされている自分に、本気で青ざめた。
 しかし、何より彼女を青ざめさせたのは・・・自分が、この排泄器官を舐められるとゆう行為に、疼きを感じている事だ。
 これが、快感とゆうものなのかどうか・・・自慰行為すら未経験な彼女には、理解できなかったが・・・それでも、この感覚が近い事くらいは理解できた。
 そう、ありいて言えば、自分が感じているのを、事実として認識させられた。
 しかも、変態じみた行為で。
 「ぃ・・・やぁ・・・・・・」
 短く、そんな呟きを漏らす。
 そして、再び顔をベットの上に埋めた。
 これ以上、直視する事は出来なかった。
 あまりに恥かしい姿と現実を。
 だが、マークは、自分の気持ちには気づかないで行為に没頭している。
 まるで、自分が玩具か何かのように扱われているような気がして、フィリアは余計に羞恥と情けなさを感じていた。
 そして、理由があるとはいえ・・・それを跳ねつける事の出来ない自分に。

 ぴくぴく震えるお尻を見ながら、マークは顔をあげた。
 フィリアの股間は、マークの唾液でびっしょりになっていた。
 しかし、それでも彼女は、顔が離れてくれた事で、少しだけ安堵を得た。
 「姫様・・・服、脱ぎましょうか。」
 その言葉で、再び彼女は崖に突き落とされたような気分になったが・・・よく考えたら、着たままで『する』事こそ、彼女には恥かしいような気がして起き上がる。
 普通は、服を脱いでするものなのだから・・・脱ぐのは当たり前。
 心の中で、そんな事を呟きながら、フィリアはようやく起き上がった。
 そう、『する』事自体は、もう覚悟したのだから・・・「しっかりしなさい、フィリア」と自分を叱咤激励する。
 「あ、あの・・・後ろのボタン、外して頂けますか。」
 男の人にこんな事を頼むのは、気が引けたが・・・まさか、マーニャを呼び出すわけにもいかない。
 フィリアは、心を落ち着けて、自分の髪を持ち上げて背中を見せる。
 「え、あ・・・は、はい。」
 何故か慌てたような声。
 (ふふ、あんな事までしてきた癖に・・・こんな事で動揺するなんて、変な人。)
 だが、結果的に、マークの今の対応がフィリアの心を落ち着けてくれた。
 なんとなく、可愛くさえ見えてくる。
 それが、彼女の中にある何か懐かしい記憶に触れる・・・思いだせないが、懐かしい何かに。
 あれ程あった嫌悪感が、今はもう煙が晴れたかのように消えている。
 寧ろ、彼を受け止めたいと思うようにさえ、なっていた。
 (なんでだろう・・・こんな気持ちになるの・・・・・・)
 それは、恋愛感情に似ていたが・・・決して同じモノではない。
 何かを愛しく思う感情・・・・・・・・・・・・

 ぼうっとしていたら、いつの間にかマークは全てのボタンを外し終えていた。
 「姫・・・?」
 緊張しているのだろうか・・・マークの声は、少し震えている。
 「あ、ごめんなさい。」
 一度深呼吸して、覚悟を決める。
 フィリアは、思いっきりよくドレスを脱ぐ。
 袖から腕を抜き、立ち上がるとドレスを下に落した。
 長い髪が、はらりと揺れ、彼女の可愛らしいお尻を隠す。
 彼女の腕が背中にまわり、ブラジャーのホックを外すと、それを脱いだドレスの上に落して・・・フィリアが、マークの方を向いた。
 あの極上の白い肌が、全身に広がっている。恥かしさから、頬を朱色に染めているのが、よくわかった。
 両腕で胸を隠しながら、ゆっくりとベットの上に座った。
 それから、気まずそうにマークの方を見ている。
 一方、マークは、少女のあまりの美しさに・・・見惚れていたのだ。
 まるで、絵画の中から抜け出してきた、美の女神の如き姿に・・・
 その時、ふいにプイとフィリアが頬を膨らませて顔を背ける。
 「どうせ、貧相な体とか思っているんでしょう。」
 フィリアの体は、確かに胸は小ぶりで、お尻の方もまだまだ出ているとは言い難い。
 だが、その極上の白い肌はどんな男でも引きつけるだろうし、その美しい容姿はどんな男でも虜にしてしまうだろう。何より、この少女の持っている溢れるような高貴な気品とまるで妖精を思わせるような雰囲気は、何モノにも換えがたいものだ。
 少なくともマークは、既に彼女のその姿に心奪われている。
 「そんな事ないですよ、姫様。」
 「嘘・・・だって、男の人って、マーニャみたいな娘がいいんでしょ。」
 フィリア付きの侍女マーニャは、確かに胸もお尻も出ていて腰も適度にくびれていた。
 男なら、誰もが一度はお相手願いたいと思うかもしれない。
 「姫様は、ああゆう風に将来なりたいんですか?」
 マークが、フィリアに圧し掛かっていく。
 フィリアは、押されるようにベットの上に横になり恥かしそうに身を捩じらせた。
 「大丈夫ですよ、姫様は成長期なんですから。そのうち、ここも・・・」
 そう言って、マークが胸を撫でるように触る。
 「っん」
 そして、次にお尻に触れてくる。
 「あ・・・」
 「それにここも・・・直ぐに彼女のように成長しますよ。」
 声を出した事を恥じたのか、フィリアがまたむっつりと黙り始めた。
 だが、マークは気にせずに喋り続ける。
 「それに、姫様はこのままでも、十分素敵ですよ。」
 だが、彼女は信じてはくれなかったようだ。
 マークは、苦笑して彼女の体に触れ始める。
 「この雪のように白くてすべすべしていて、かつ吸い付くようにしっとりとしている肌。」
 お腹の辺りをさすり、首筋に舌を這わせる。
 「ん、んんっ!」
 這わせた舌をそのまま、頬の所にまで持っていき、頬に吸い付くようにキスをする。
 「それに、神の彫刻家ですら成し得ないような、美しき顔・・・」
 頬に何度かキスをすると、今度は蜂蜜色の長い髪を手に取り、鼻に持っていき、その匂いを嗅ぐ。
 「そして、黄金の蜂蜜のような豪奢な髪。」
 「ふぁ・・・」
 一つ一つの行為が、言葉が・・・フィリアに甘い痺れを与えていく。
 「まるで、妖精のような・・・いえ、妖精以上の美しさを備えていますよ、姫様は。」
 「ふぇ・・・?」
 「姫様、貴方は、その場にいるだけで人を引きつける魅力を備えています。それって、普通はそうそう簡単には、備わらないものなんですよ。」
 フィリアの顔は、まるで口説いているかのように(実際に、口説いているのだが)囁くマークの言葉で、真っ赤に染まる。
 今までの、恥かしさからくるものとは、別の・・・
 「でも・・・」
 (やっぱり、胸もお尻も欲しいかも・・・)
 そうすれば、女として・・・
 (女として、何?)
 一瞬、何を考えていたか、理解出来なかった。
 それに、マークの次の行動が、フィリアの思考を吹っ飛ばした。
 「でも、何ですか?姫様は、凄く魅力的ですよ・・・ほら。」
 マークは、フィリアの手を取り、自分の股間へと導いた。
 「・・・え・・・あ・・・!」
 それは、何よりも熱くなっていて、そして硬かった。
 何か、脈打っているようにも感じられる。
 (これって・・・男の人の・・・・・・よね。)
 ズボンの中に差し入れた手からは、未知の感触が感じられた。
 フィリアの持って生まれた好奇心が、そろそろと頭を出し始めてきた。
 「・・・ずるいです、マーク様。」
 「・・・え?」
 予想外のフィリアの言葉に、マークは目を点にする。
 「だって、私にばかり・・・恥かしい格好をさせて。」
 恥らうようなフィリアの言葉。
 それに習うように、体を捩じらせる。
 「あ、うん。」
 マークは、その言葉に顔を赤くした。
 「それじゃ・・・」
 立ち上がって、マークはズボンのベルトを外す。
 上は、体に文様を描くために、既に脱いでいる。
 フィリアもベットの上に起き上がり、座った状態でマークの動きを凝視していた。
 (やりにくいなぁ・・・)
 こう、注目されると、さすがにやりにくい。
 何より、彼女の視線のそれは、興奮からとゆうより・・・唯の生態的興味本位からのような気がする。
 だが、最後には結局脱ぐのだからと、覚悟を決めてパンツと一緒に一気に引き降ろした。
 興奮して勃起したマークの肉棒は、痛いぐらいに起立していた。
 「・・・これが・・・・・・」
 (男の人の性器・・・)
 初めて見るそれは、恐ろしい程に大きかった。
 (これが、私の中に入るの?)
 信じられなかった。
 思わず、手にとってみる。
 「うっ・・・」
 行き成り敏感な部分に彼女が触れたため、マークは思わず声を出していた。
 「あっ、ごめんなさい。」
 謝りはするが、手をどかすつもりはないらしい。
 マークも、されるがままになる。
 フィリアは、胸を片手で隠しながら、いろいろな角度に頭を回して、マークの肉棒を見回す。
 「ぁっ・・・」
 フィリアが、顔を近づけた時に彼女の息がかかり、敏感にマークのモノを刺激した。
 マークが、再び声をあげたのに驚き・・・そして、好奇心がつのる。
 (気持ち・・・いいのかな・・・)
 赤くなった顔で、もう一度息を吹きかけて。
 「姫様・・・」
 マークが、切なげに自分を呼ぶ。
 同時に、一気に押し倒されていた。
 「マーク様っ?」
 「マークと呼び捨てでいいですよ、姫様。」
 マークは、そう言うと・・・フィリアの顔に自分の顔を近づける。
 「本当は、キスくらいは好きな人と・・・って思ってたんですが・・・・・・・・・ごめんね、我慢できない。」
 そのまま、フィリアに何も言わせない内に、唇を重ねてしまう。
 「んっ!?んんー、ん・・・ん・・・・・・」
 最初に驚きがあった、そして次にどこか酔ってしまったような感覚・・・最後に、不思議な安堵感。
 (・・・なんで・・・・・・)
 目の前にいる男は、昨日まで顔も知らなかった赤の他人だ・・・しかも、元々したくて結んでいる関係ではなかった筈だ。
 なのに、今は全てを許してしまっている・・・
 (このキス・・・変・・・・・・)
 無理矢理なのに嫌悪感を感じない。
 (なら、好きだから?)
 それも違う、想像していたような高揚感がない。
 (・・・何これ?凄く懐かしくて・・・それでいて、いつもよくしているような・・・)
 感じるのは、男じゃない・・・そして、自分も女として受け止めていないような・・・そんな曖昧な感覚。
 しかし、戸惑っていられたのは、ここまでだった。
 マークが、一度唇を離して・・・再び、重ねなおした。
 今度は、舌がフィリアの口内に侵入してきたのだ。
 「んんっ!?んー、んっ、んっ、んっ・・・んぁっ・・・」
 流石に自分から舌を絡めたりはしないが・・・ぼーとしてい事もあり、フィリアは簡単に舌の侵入を許し、口内をいとも容易く蹂躙させてしまう。
 あっとゆう間に塗り替えられた刺激に、甘い感覚がフィリアを攻め立てて、頭の中を真っ白にさせる。
 先程のキスでは得られなかった高揚感が、行き成りMAXで投げ入れられた気分だった。
 「んぁ・・・んー、んん・・・ん・・・」
 唇を吸いたて、フィリアの唇を存分に味わうマーク。
 そして、十分に堪能した後・・・ようやく、唇を離す。離す間際にも、二、三度唇を突いていく。
 最後に、ぺろりと彼女の上唇を舐めあげた。
 「姫様って、甘いんですね。」
 「え、うっ・・・」
 一瞬、どうゆう意味だろうと、考える。
 ガードが甘いって事だろうか、それともそのままの意味で、唇の味が甘いって事だろうか・・・と。
 そして、顔を赤くする。
 「いいなぁ・・・表情がくるくる変わって・・・・・・可愛いすぎますよ、姫様は。だから、我慢できなくなっちゃうんですよ。」
 マークは、体をずらすと・・・フィリアの右の乳房を口に含んだ。
 一口で含めるそれを、マークは口の中で吸い付き、舌で舐め回して刺激する。
 「うんっ、あぁっ・・・」
 そして、左の乳房も左手で刺激し始める。
 最初は、捏ねるように全体を掴み、揉み回す。そして、乳首を指の間で挟んで刺激しながら、乳房を揉んでいく。
 「ふぁっ、んっ、んっ、あっ・・・あんっ、あんっ・・・あぁんっ!」
 一方で、口の中の動きも止まらない。
 しゃぶりつく事を中心に、キスの雨を降らせたり、吸い付いたり、舌で舐め回してみたり、乳首を甘噛みしたり・・・
 その一つ一つに、フィリアは、反応を示してしまう。
 「ふぁん・・あぁ、う、あぁ、う・・・んんっーんぁっ、はぁはぁはぁ・・・え、あっ、んんっ、ん・・・っ!いっいぁっ!やだやだっ噛んだら、いぁっ!!」
 最後には、涎を口元からだらしなく垂れ流し、背を反りあげて、声をあげてしまう。
 「どうやら、軽くイったみたいですね。」
 「いった・・・?」
 息を弾ませながら、少し虚ろな目でマークを見るフィリア。
 「気持ち良くなったって事ですよ。」
 少し微笑みながら、マークはフィリアの口元の涎を舌で拭って・・・また、キスをする。
 「もっと、気持ち良くなりましょう・・・姫様。」
 「ふにゃ・・・ん・・・ん・・・・・・」
 再び唇を重ねながら、マークの手が静かに股間へと伸びていった。
 「はぁぁっん!」
 マークは、股間に手を伸ばし・・・秘唇の上の方にある突起に触れたのだ。
 その瞬間、電撃が走ったかのような快感が、フィリアの体を突き抜けた。
 「気持ち良いですか?」
 「・・・・・・・・・」
 フィリアは、男の手で絶頂に導かれた事が恥かしくて、顔を背けた。
 マークは、気にした様子もなく、ショーツの上から秘唇の上をなぞる。
 「んっ、あっ!」
 思わず声を出すフィリア。
 それもその筈、ショーツはなぞられただけで、シミを作り出す程だったからだ。
 ショーツの下に手を潜らせると、マークの指が濡れるのを感じた。
 ちゅく・・・
 押すだけで、愛液が溢れ出る。
 「ひぃん!」
 フィリアの声が、マークに準備が出来た事を再確認させてくれた。
 「どうやら、準備出来たみたいですね。」
 「・・・準備・・・・・・?」
 「濡れているって事です。」
 「・・・・・・?」
 マークは、ショーツから手を引き抜き、その指を見せた。
 その指は、確かに濡れていた。
 「・・・え・・・!?」
 彼女の性知識は、侍女達と下町で出会った友人の知識から得たものだ。
 それは、所々かけていて、不完全な代物だ。
 そして、その中には・・・濡れるなどとゆう事柄はなかった。
 「ほら・・・」
 もう一度、マークは手をショーツの中に差し入れて、今度は手全体で股間を掴んで揉むように刺激する。
 じゅくじゅくといった淫らしい音が、室内に響き渡った。
 「うんっ!?あっ、あっ、あっ、いぁっ!」
 途中、フィリアは、涙目になって、マークの腕を抑える。
 自分の体に起こった未知の事態に、恐怖しているのだ。
 その顔を見てマークは、手を抜いて頬を撫でた。
 「うそ・・・」
 一応、安心させようとしたのだが・・・その手についていた大量の愛液が、フィリアにはショックだったのだろう。思わず、涙ぐんでいる。
 「大丈夫、これって自然な事なんだから・・・ほら、僕のも触ってみて。」
 優しく頭を撫でながら、フィリアの手を自分の肉棒の先端に導く。
 にゅちゅ・・・とした、感触。
 「え・・・これって・・・」
 「男も女も、気持ち良くなるとこうなるんです。」
 マークの肉棒の先からは、先走り液と呼ばれる、透明な液体が滲みでていた。
 「気持ち良いの・・・?」
 不安そうに、フィリアがそう尋ねる。
 「ええ・・・姫様は?」
 この問いに答えるのは、勇気が必要だった。
 幾らなんでも、淫乱だなんて思われたくない・・・でも・・・
 「わ、私も・・・です。」
 そう答えてしまう。
 答えてからはもう、マークの顔を見る事が出来なかった。
 あまりに恥ずかしすぎて。
 「嬉しいですよ、姫様。僕の拙い愛撫で感じてくれて。」
 マークは、嬉しそうにして、キスをする。
 「じゃ、そろそろ・・・いきますよ。」
 その言葉の意味する所を理解して・・・フィリアは、恥かしげに頷く。
 マークは、ショーツに手をかけると・・・ゆっくりと引き抜いていく。
 彼女の秘所が、全て露になる。
 マークは、足をとって、体を間に入れる。
 フィリアは、寝転がったまま、その行動に見入っていた。
 マークの肉棒が、動くたびに振動で揺れている。
 (あれが・・・私の中へ・・・・・・)
 初めて体験する一連の動きに、生まれ持った好奇心が動きだす。
 (中へ入ったら、どうなるんだろう。ううん、あんなに大きいの・・・本当に入るの?)
 マークの先端が、フィリアの秘所へとあてがわれる。

 ちゅく・・・

 「はぁんっ」
 思わず声に出していた。
 ちょっと触れただけでこれなのだから・・・
 (あっ・・・ああ・・・これが私の中へきたら・・・私、どうなっちゃうの・・・んんっあ・・・)
 潤んだ瞳で、フィリアはマークが中へと埋めるのを待つ。
 ずぶ・・・
 少しだけ、中へ入れられる。
 「ふあぁぁっ!」
 少し痛みが走ったが、フィリアの中では痛みよりも気持ち良さの方が勝っていた。
 だが、マークは、其処から先には、中々進もうとはしない。
 「・・・どうして?」
 やはり、自分は女として見られないんじゃないか・・・そんな不安が、フィリアの中に生まれる。
 もっとも、ここまで勃起させているのだから、そんな心配は本来不必要なのだが・・・欠けた性知識では、そこまでは理解していなかった。
 「ここから先は、凄く痛いから覚悟してね・・・一気にいくから。」
 (痛い・・・?でも、こんなに良いんだから、きっと大丈・・・)
 彼女は、頷きながらそんな事を考える。
 だが、少し甘かった。
 最初の痛みは、快感を軽く凌駕しているのだ。
 「いくよ・・・」
 ずぶ・・・ずぶぶぶぶっ!
 マークは、腰を遠慮なしに一気に沈めた。
 彼も経験が無いからなんとも言えないが・・・ゆっくり進めるより、一気に貫かれた方が痛みは高いが一瞬で終わる分マシと聞いた事があったからだ。
 「ひぃっ、ぐぅぅぅぅあっー!!」
 室内に封印の魔法を掛けていなかったら、おそらくは城内中に響いたのではないか・・・そう思わせる程の悲鳴が、室内に響く。
 「あーっ、あーっ、ああぁぁぁっーーー!!」
 フィリアは、無意識の内にマークの首にしがみ付き、痛みを堪えようと力強く抱きしめる。
 マークは、フィリアがしたいままにさせ・・・こちらも抱きしめて、髪を撫でて気を落ち着かせようとしていた。
 「あーっ・・・あーっ・・・・・・あーっ・・・・・・・・・ひぃっく・・・」
 涙を流し、鼻や涎でべちょべちょになりながら、フィリアはしくしくと泣き始めた。
 「もう、大丈夫?」
 「・・・痛い・・・凄く痛い・・・ずっと痛い・・・・・・」
 恨みがましい目で、フィリアはマークを見る。
 「ごめんね・・・でも、これは女の子の通過儀礼だから。我慢してね。」
 マークは、シーツで彼女の顔を拭いてあげながら、苦笑する。
 「男の方って、痛くないんですの?」
 「えーっと・・・痛いくらいに締め付けてはいるかな・・・・・・」
 それが、凄く気持ち良い・・・とは、言わなかった。
 「なんか・・・ずるいですわ・・・・・・」
 「あはは・・・・・・」
 マークの表情から、何かしら読み取ったのか・・・拗ねた表情でフィリアが呟き、マークは笑ってそれを誤魔化す。
 唯、入っているだけでも酷く痛むのか、マークに話かけながらも時々顔をしかめる。
 元々、マークのような大人のモノが、未だ少女でしかないフィリアの睦に収めるには、少々無理がある。
 痛みが引かないのも、無理はないだろう。
 また、フィリアは、一筋涙を流した。
 その姿が、あまりに可憐で美しく・・・そんな少女を貫いているのが、自分だと思うと・・・マークの股間は、いやがおうにも熱くなる。
 「・・・っん!」
 「大丈夫っ」
 自分の不純な思考を悟られたのかと、一瞬戸惑うマーク。
 「だ、大丈夫です・・・何だか・・・あの、その・・・急に大きくなったような気がして・・・」
 顔を赤らめて、フィリアがそう説明する。
 どうやら、息子には、自分の思考は隠せないようだ。

 マークは、痛みで腰を動かす事が出来ない代わりに、この美しき少女の唇に、自分の唇を何度も重ねていた。
 「ん・・・んん・・・んー・・・・・・」
 ちゅぱ・・・と、唇を離して、再び重ねる。
 「ん・・・ん・・・ん・・・・・・」
 それでも、キスをするたびに腰が揺れ、前後運動こそしていなが・・・擦りつけるように動くそれは、フィリアに痛みを与える。
 しかし、キスをしていると安心できるのか、フィリアの方でもそれに喜んで応じていた。
 「・・・ん・・・んぁ・・・・・・マークって、キスが好きなんですね。」
 「・・・え・・・」
 「だって、さっきから暇さえあれば、キスしてますもの。」
 フィリアは、面白い事を発見したと、微笑みを見せた。
 「・・・ん、そうかもしれませんね。」
 マークは、そう言って笑みを返す。
 その笑みを見ながら、フィリアは、ふと思う。
 (私の初めての人・・・笑顔が可愛い人か・・・こうゆう人が最初の人でよかったのかもしれませんね。)
 元々、魔女に連れて行かれようが、行かれまいが、望むままの婚意など願えぬ立場だったのだ。それを考えれば、それほど悪い相手ではないと思えるような気がする。
 (いいえ、それどころか・・・)
 「えっと・・・あの、姫?」
 マークの戸惑ったような声。
 何故か、行き成り無償の微笑みとゆうか、大輪の笑みとゆうか・・・そんなモノを向けられて、マークは戸惑っていた。
 「すみません・・・唯、貴方でよかったなって・・・」
 その言葉に、マークの顔が赤く染まる。
 自分で言っておいて、言葉の意味に気づき・・・フィリアの方でも顔を赤く染め上げていた。
 「あの・・・そろそろ・・・・・・」
 長い時間動かないで入ったままでいたので、段々と体の方で大きさに慣れてきて、痛みも小さくなってきていた。
 多分、何も言わなければ、マークの方はずっとキスばかりするのではないかと思い、フィリアは自ら進言した。
 「うん・・・大丈夫?」
 優しい瞳・・・だが、何処か違うような気がした。
 でも、それは自分も同じだ・・・何か違和感を感じている。
 (でも、それは一体何?)
 「はい・・・」
 だが、フィリアは、もう考えるのをやめた。
 今は唯・・・
 (今は、この人の事だけを考えて・・・そして、最後まで。)
 義務からなる行為だが。それでも、自分はこの人の事は嫌いじゃない・・・フィリアは、そう思っている。
 出会ったばかりのこの人に、何故是ほどまでに近親感を感じるのかがわからないが・・・嫌いではない、寧ろ好きと言える感情を持っている。
 何も知らない筈の人の事に、ここまで感情が走ってしまうのは・・・酷く珍しいような気がした。
 (もしかして、一目惚れとゆうものかしら?)
 それなら、それでいい・・・だから。
 「大丈夫です。」
 そう言って、手を広げて彼を迎え入れた。

 「んっ・・・んんんっ・・・はぁっ!」
 マークは、一度限界まで引き抜くと・・・ゆっくりと中へと入れなおす。
 そして、最奥まで行くと、彼女の子宮を小突いた。
 「うんっ!」
 フィリアの何か耐え様とする声があがる。
 「当たるのは、苦手?」
 何か口にしようとするのだが、フィリアは一度のそれで言葉を無くしていた。
 だから、代わりにコクンと頷いて返事とする。
 「わかった・・・気をつけるよ。」
 そう言って、ゆっくりとまた限界まで引き抜きを始める。
 「はぁっ・・・あ、あ、あああ・・・ん・・・・・・」
 そして、またゆっくりと入れる。
 「うぁっ、んっ、んんんっ・・・・・・ぁー・・・」
 マークの肉棒が引き抜かれる度に、睦内の壁が引きずられるような感触。
 そして、肉棒がまた抽入しようとする時の、壁を割る感覚。
 交互に訪れるこの感覚に、フィリアはまだ残る痛みと共に甘い快楽が彼女を攻め立てていた。
 ぼうっとして、もう何も考えられない。
 マークは、優しく腰を動かしながら快楽を享受している少女を見て、腰元を熱くしている。
 思わず、腰を早く動かしたい衝動に駆られていた。
 だが、僅かに残った理性が、それを留める。
 唯でさえ、無理強いをしている今の状況下で、これ以上嫌われる要素を作りたくなかったのだ。
 だが、フィリアの方は違った。
 マークが、優しく攻めあげているため、良い感じで気持ち良くなり、快感を得てきている。
 今はもう、何も考えられなくなり、この感じている快楽を更に強く感じたいと思うようになった。
 その意味については、もう考えていない。
 唯、今はもっと・・・もっと・・・それだけが、頭の中に響く。
 フィリアは、マークが腰を静めた瞬間に、自分の足を交差して、彼の体を抑える。
 そうして、マークの体を抱きしめると、自らも腰を振り始めた。
 「あっ、あっ・・・・・・あんっ、あんっ、あんっ、ああっ・・・」
 これでもかというような、嬌声をフィリアが上げ始める。
 「っく・・・」
 マークは、フィリアの動きに翻弄されながらも、自らも腰を大きく動かしてそれに対応する。
 「んっ、いいっ・・・いいの、あ、はぁはぁっ・・・もっと、お願いっですぅっ、ん、はぁっ・・・あっ、あっ、あっああー!!」
 その強い快感に、マークの限界が近づき、抽送も激しくなる。
 「っう、あっ、はぁっ、はぁっ・・・っく、出る・・・限界・・・出るっ、出すよっ!」
 「はい、もう、もう・・・私も、私も・・・来ます、何か、何かぁっ、いっ、あぁぁぁっ!!」
 最後にマークが一突き・・・最奥を叩いた所で、限界が訪れた。
 そして、その叩かれたショックで、フィリアも絶頂が訪れ、大きく背を反らして嬌声をあげた。

 どくっ・・・どくどく・・・・・・

 見えたわけでもないのに、白い濁液が自分の奥で弾けるのがフィリアには見えたような気がした。
 熱い精液は、じんわりと広がり睦内を染めていく。
 「ああ、熱い・・・です・・・マークぅ・・・・・・」
 その感触に甘い痺れを感じながら、フィリアはマークに抱きついて陶然とした気持ちで囁く。
 「凄いですよ・・・姫様の中・・・まだ、僕のを絞り取ろうとしている。」
 マークは、同じように彼女の耳元で、囁き返した。
 そして言葉どおり、彼女の中ではマークのを一滴でも多く搾り取ろうとでも言うのか、妖しく肉壁が動いてマークの肉棒を刺激してやまない。
 「・・・やだ・・・・・・」
 自分でもそれを感じたのか、フィリアは頬を赤らめる。
 「熱い・・・」
 そう、凄く熱い。
 それは、尋常ではない程に熱かった。
 人が発する熱さではない。
 「大丈夫・・・恐くないですから・・・ね。」
 フィリアを抱きしめて、キスをしながら・・・彼女を励ます。
 「精が、力へと変換されているんです・・・姫様には、熱さといった感覚でそれを認識しているんですね。」
 そして、もうしばらくの辛抱ですと付け加える。
 「はぁ・・・あ・・・あ・・・あっ、ダメ、凄くっ!来るっ!!」
 何かが全身を駆け巡る・・・しかし、それが成った後は・・・まるで、生まれ変わったかのような感覚が、全身を満たす。
 マークを強く抱きしめ、それが過ぎ去るのを待った。
 「うん・・・あぁ・・・・・・毎回・・・こうなっちゃうの?」
 フィリアは、ぐったりとした体の疲労を感じながら、崩れてよりかかるマークに囁くように聞いた。
 「え・・・えぇ・・・・・・まぁ・・・今回よりかは、楽だと思いますけど・・・痛みがない分。唯、魔力を無理矢理上昇させるわけですから・・・その、いろいろと無理もかかるわけで・・・でも、今回のは無作為に放ちすぎたかも・・・」
 (魔力を・・・)
 提供主であるマークにも、疲労が蓄積されるようだ。
 マークは、フィリアの上から転がるように隣へ仰向けに落ちた。
 「まさか・・・こんなに、疲れるなんて・・・・・・」
 (予想外だ・・・)
 「もう・・・ダメ・・・・・・だわ・・・」
 「そんなぁ・・・ダメですよ、自分の部屋に戻らないと・・・・・・」
 そう言いながらも、マーク自身一歩も動けずにいる。
 そんなマークの腕を持ち上げて、フィリアは自分の首の下へ置いた。
 「・・・・・・姫様・・・?」
 しかし、抵抗する気力もないのか・・・マークは、そう問い掛けただけに終わる。
 「私・・・昔から夢だったんです、好きな人の胸の鼓動を子守唄にして・・・眠るの・・・が。」
 何か、子供の頃に、ロマンスノベルか何かで、そんなシーンを見たのかもしれない。
 マークは、随分とマセた子供だったんだなと・・・そんな感想を抱いた。
 だが、それを口にする間もなく、眠りに落ちる。
 (そう言えば、あの決意・・・結局守れなかったなぁ・・・・・・)
 フィリアは、そう思って苦笑するが、それほど後悔はしていなかった。
 この結末は、これはこれで良いと思う。
 自分の頭をマークの胸の上に寄せると・・・そのまま眠りに落ちた。



   昔から、夢だった・・・胸の鼓動の子守唄を聞きながら。



朝・・・
 「ひぃ、姫様ぁっー!!」
 マーニャの声が、何処からとも無く響いていた。




あとがき
 ども、ファンタジーの初かきー!
 Lは、今までに恋愛モノとかロボットモノとかを中心に書いてたのですが(一般向けで)
 18禁に新規参入にあたって、絶対に書こうと思っていたのが・・・ファンタジーです。
 Lが、小説を書こうと思ったきっかけは、ファンタジー小説を読んだのがきっかけで・・・それまでは、歴史小説とかしか読んだことありませんでした。
 こ、こんなおもろいもんがあるなんてーって、当時はショックを受けたもんです。
 だからこそ、いずれファンタジーを・・・と思い、イクセイソウ・・・全然、書いてねいや
 って事で、今回挑戦しました。
 ここだけの話、本当は魔女さんがお姫様にえっちぃ事する予定だったけど・・・やっぱ男×女じゃないとね。
 なので、こんな形に変更。
 次回からは、もっとファンタジーらしさを(次回は、無理っぽいから・・・次々回くらいから・・・・・・;)出していけたらなと思っています。

 エルフとか、エルフとか、エルフとか・・・エルフばっか?


2002/8/22


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