魔女の弟子-2
マーニャは、朝になり寝所にいないフィリアを探して、城内中を探し回っていた。
そこで、マーニャは昨日マークがフィリアを呼んでいた事を思いだし、マークの泊まっている部屋へと急ぐ。
もしかしたら・・・そんな嫌な焦燥感を胸に抱きながら。
マーニャは、マークの部屋のドアをノックしてドアノブに手をかけた。
もしかしたら、鍵が掛かっているかもと思ったのだが、すんなりとドアは押せた。
封印の魔法が、マークが気を失った事により、掻き消えていたのだ。
「ひぃ、姫様ぁっー!!」
マーニャの悲鳴じみた声に、ベットで抱き合って寝ていた二人が飛び起きた。
「え、・・・あ・・・・・・」
まずは、マークが状況を確認する。
それから、フィリアも周りを見回し・・・・・・
「きゃぁー!!」
悲鳴をあげてしまった。
バチンッ!
結構、いい音がした。
「マーク様、マーク様・・・」
「う・・・んっ・・・・・・」
体を揺すられて、マークが再び意識を覚醒させる。
「・・・よかった、大丈夫ですか?」
「え、ああ・・・一体、どうして・・・・・・」
マークのその問いに、フィリアは思わず明後日の方向を見る。
幾らなんでも、自分が叩いてベットから転がり落ちて頭を打ったとは言えない。
「あの、とりあえず・・・何か、お召し物を・・・・・・」
マークは、昨日のフィリアとの情事の後、そのまま寝入ってしまったので・・・服は、何一つ付けていなかった。
だが、同じ状態であった筈のフィリアは、しっかりとドレスを着込んでいる。
どうやら、気絶している間に着替えたようだ。
「えっと・・・服、服・・・と・・・・・・」
マークは、周りを見回して、何処かに落ちているはずの服を探す。
「こちらで御座います、マーク様。」
地獄の其処へと引きずり込もうかとゆうような、低い声がマークの耳に入る。
「え、あっ・・・えっと・・・マ、マーニャさん・・・でしたっけ・・・」
マークは、彼女に情事の後の現場を見つけられたのを思いだして、思わず冷や汗を流す。
(な、何か、凄い殺気を感じるんだけど・・・)
「とにかく、早くその粗末なモノをしまって下さい。」
「は、はい・・・」
マークは、押されるかのように、反射的にそう答えていた。
二人に後ろを向いてもらっている間に、マークはズボンを穿き、シャツを羽織った。
既に気絶している間に、二人に十分以上に眺められているのでは?といった意見もあるだろうが・・・それでも、着替える姿とゆうのは、なんとも恥かしいモノだ。
「どうぞ・・・」
そう言ってから、マークはその黒く長い髪をふわりとかきあげ、シャツの中へと入ってしまったモノをかき出した。
「・・・マーク様って、御髪がとても綺麗ですね。」
フィリアは、少し感動したように声に出して呟いた。
「そうですか?」
まるで漆黒の闇のように黒く、だが光りを弾き光沢を生み出すそれは黒曜石のような美しさも持っていた。
「ええ・・・でも、どうしてそんなに長く伸ばしているんですか?」
アスリードや、この周辺諸国では、男が髪を伸ばす習慣はない。
だからこそ、不思議に思ったのだろう。
「髪には、魔力を高める効果があり。そして、それは長ければ長い程良いとも言われております。」
マークは、髪を一つにまとめると、それを手にとり一つに編み始めた。
「成る程・・・あ、マーク様、お手伝いいたしますわ。」
フィリアは、マークの手から髪を奪い取り、それを編み始めた。
「では、私も切らない方が良いのですね。」
「ええ、ですが、高めると言っても、それ程高い効力が得られるわけではないのです。ですから、お切りになりたかったら、どうぞ。」
マークは、フィリアに微笑んで、そう付け加える。
フィリアは、そんなマークの顔を覗き込み。
「マーク様は、髪の長い女性と短い女性、どちらがお好みですか?」
「っえ、ええ!?」
あたふたと、面白いくらいに動揺しているマークに、悪戯を成功させた子供のような笑顔でフィリアが笑った。
「ふふふ、冗談です。」
真っ赤になった顔を見ながら、フィリアはチェシャ猫のように目を細めた。
マーク赤くなりながら、それにつられて笑った。
だが、その笑い声は、怒声の前に掻き消された。
「姫様っ!」
「マーニャ、そんなに大きな声をださなくても・・・」
「私は、これでも十分以上に抑えております、それより髪など結っている場合ですかっ!」
「でもほら・・・マーク様の髪って、とっても綺麗なのよ。」
フィリアは、そう言って編んでいた髪をマーニャに差し出した。
「あら、本当・・・何か秘訣あるんですか?」
「え、いえ、特に何かしているわけでもないんだけど・・・薬草を入れて作った洗髪剤を使っているからかな。」
「っわ、枝毛が一つもない・・・魔女の方って、みんなこうなんですか?」
マーニャは、途中でハタと気づく・・・
「って、そうじゃないでしょう、姫様・・・」
しくしくと、マーニャが涙する。
「そうだったわね、マーク様・・・あの、昨日の件で、マーニャが。」
「ああ・・・」
(・・・まぁ、怒鳴りたくもなるよな・・・大事なお姫様を汚したりしたら。)
「話せる事は少ないんですが・・・」
「それって、どうゆう事ですかっ!話せる事が少ないって。」
マーニャは、思わず眉をあげていぶかしむ。
「こういった事になったのは、我が師の命があったからです。早急に姫様の魔力を高めていかなければならない理由があるので・・・性行為は、魔力を高める効果を持っています・・・無論、ある程度の力の制御みたいなのも、必要になってはきますが。」
「命っ!?魔力っ!?・・・あ、貴方は、そんな理由で姫様に手を出したのですかっ!!」
「マーニャっ!」
フィリアが、声でマーニャを抑える。
だが、マーニャの言葉は止まらない。
「そんな事のために、姫様をっ・・・!」
「そんな事ではない、しておかないと、大変な事になるから行為に及んだんだ・・・抱かなくて済むなら、そうしたかった。」
マークも、反発するように、そう言いきって・・・顔を俯かせる。
そして、フィリアは、二人に気づかれないようにそっと顔を伏せた。
「僕だって、出来る事なら・・・彼女の意思で相手を選ばせてやりたかった・・・・・・」
「っ・・・・・・」
マーニャは、何か言おうとして・・・それが言葉にならなく、途中で止める。
それを言うなら、マーニャは最初っから魔女に対抗するしかないのだ・・・しかし、それは国中の人間の命を天秤にかける行為に相当した。
マーニャには、自分の命ならともかく・・・他人の命まで左右するような選択は出来ない。
「二人とも・・・もう、そこまでにしましょ。これ以上論じても、仕方のない事。それに、王族なら・・・例え魔女の件がなくても、望むべき婚意など手に入るようなものじゃないのだから。そう気にするような事でもないわ。」
そうでしょ、と、フィリアが二人に微笑んだ。
「姫様・・・」
マーニャが、思わず涙ぐむ。
「・・・っさ、マーニャ。そろそろ、私達も準備をしなくては・・・この格好では、流石に旅には出れないでしょうから・・・ね?」
「・・・はい。」
マーニャは、もう何も言わない・・・いや、言えない。
既に少女は、決意しているのだから。
「それでは、マーク様。後ほどお会いいたしましょう。」
フィリアは、優雅に一礼した。
「マーニャ・・・私、変になってしまったのかしら・・・」
「姫様・・・?」
フィリアは、自室に戻ると・・・マーニャに向かって、そう口を開いた。
「最初に会った時は、何か変な感じはしたけど・・・嫌いじゃないって、だけだった。でも、あの人に抱かれなきゃいけないって知った時、運命だって諦めるのは出来たけど・・・そこにある嫌悪感は消せなかった。でも、あの人に触れられて、唇を重ねられて・・・」
フィリアは、そっと自分の唇を抑え・・・
「それが、段々と消されていって・・・嫌ではない・・・ううん、いいかもって思えるようになっていって。自分でも、変だってわかってたの・・・でも、気持ちが抑えられなかった・・・こんなに急激に気持ちが変化するなんて・・・絶対おかしい筈なのに・・・・・・でも、凄く彼が愛しくて・・この人にだったら抱かれてもいい・・・て、思って・・・」
「・・・・・・・・・」
「でも、彼が、抱かなくてもいいなら、そうしたかった・・・て、言った時・・・何かショックで・・・・・・胸が苦しくなって・・・」
フィリアは、マーニャの胸の中で嗚咽を漏らす。
涙は見せたくない、その思いだけで我慢していたのだろう。
そんな様子は、微塵も感じさせずに。
「彼も私も、義務を果たしているだけ・・・ただ、それだけだって、最初に割り切った筈なのに・・・凄く苦しいの、マーニャ・・・」
「姫様・・・姫様は、マーク様の事・・・愛されているのですか?」
フィリアは、少しだけ考えて曖昧な表情を浮かべる。
「わからないの・・・いろんな気持ちが渦巻いてて。好きって気持ちはあるのに・・・それが、何か変な感じで・・・・・・凄く好きなの・・・こんなの、変なのに・・・初めてあった人が、こんなにも好きになってて・・・でも、その好きが・・・わからないの・・・」
「わからない・・・?」
「・・・・・・」
何か言おうとして、口を開いて・・・また、閉じる。
彼女の中でも、それが言葉にならない不可解なものでしかないから。
(一目惚れをされた・・・とゆう事かしら。姫様は一本気な方だから・・・唯会っただけで恋に落ちるような事が、認められないとか。)
だが、それも違う気がした。
あれで、フィリアには、どこか夢見る少女のような所がある。
それはそれで、彼女は認める事だろう。
一体、何が引っかかるとゆうのだろうか。
マーニャも考えてみるのだが、わからない。結局、人の心の内など、本人にしか自覚しえないものだ。
だから、マーニャは、今出来る事を口にしてみる。
「姫様、でしたら・・・今、一番強い思いに素直になればよろしいと思いますよ。姫様の心の根幹がどうであれ、彼の気持ちがどうであれ・・・一番大事なのは、姫様のお気持ちですから。」
「・・・マーニャ・・・・・・」
「好きとゆう感情は、何度も失敗をしながら育て上げていくものです。時には、傷つく時もあるでしょうけど・・・それも、きっと大事なものですから。」
「うん・・・」
フィリアは、マーニャの胸の中で安心したように笑みを浮かべる。
「ふふ、でも少し不思議な感じです・・・あの姫様から、恋の相談をお受けする事になるとは。」
マーニャの言葉に、フィリアは顔を赤くする。
だが、それも否定は出来なかった。
今思い出してみると、好き、好きっと連発していたような気がする。
「あ、あぅ・・・そ、その・・・・・・」
「大丈夫です、陛下や皆様には内緒にしておきますから。マーニャと姫様の秘密です。」
マーニャは、唇に指を当てて、悪戯っぽく笑みを浮かべた。
「マーニャ・・・ありがとう。」
フィリアは、感謝の気持ちを載せて、そう言った。
「ふふ・・・・・・」
(多分、姫様はもう大丈夫だろう・・・元々、お強い方だから・・・・・・何かあった時は、また背を支えてあげれば、姫様は一人で立ち上がれる方だから。)
それこそが、マーニャがこの少女の側にいる、一番の理由なのだから。
国王や文官、騎士達が、フィリアを見送るために、謁見の間へと集まっていた。
「・・・っは?この三人も一緒に来るのですか。」
国王の言葉に、マークは驚きの声をあげた。
「うむ、まずレリクス伯爵の次男、カイ・レリクス。」
薄氷色の髪と瞳を持つ、涼やかな顔立ちの騎士を王が紹介する。
カイと呼ばれた男・・・いや、まだ少年と呼ぶべき年頃だが、一度頭を下げると、直ぐに後ろに下がってしまう。
「まだ、年若いが、腕は我が騎士団きっての剣の達人だから、安心してよい。」
カイは、険悪な視線で、ずっとマークを見ていた。
いや、彼だけではない、他の騎士や文官達もだ。
それでも、マークの言う事を聞かねばならない屈辱に、皆耐えているのだろう。
「それから、もう一人・・・騎士をつけようかとも思ったのだが、旅なれていない騎士だけでは不都合も多いだろうと思い、魔女の森までの行程の間の護衛として雇った傭兵で・・・」
「ネイだ、よろしく頼む。」
褐色の肌に、赤く長い髪を後ろで縛っている大柄な女性。
鍛え上げた筋肉は、男のそれを軽く凌駕している。
だが、何よりマークを驚かせたのは・・・
「赤雷の・・・ネイっ!?」
「そうも、呼ばれているな・・・」
ネイは、そう言って苦笑した。
「何故、あんた程の人が・・・」
こんな所にとは、言わなかった。
だが、その言葉の通りなのだ・・・彼女は、戦場で常勝無敗と恐れられた、負け知らずの傭兵。
本来なら、こんな国に・・・規模としては、アスリードは小国レベルでしかない・・・雇われるレベルの傭兵ではないのだ。
「唯の骨休めだ・・・契約の打ち切りは、いつでもいいと言われていたからな。」
彼女は、笑ってそう答えた。
「そして、我が国の宮廷魔法師・・・ジョン・ブルリックだ。」
「・・・っは、わ、私もで御座いますか?」
寝耳に水だったのかも知れない、ジョンは肥えて緩んでいる顎を震わせて、驚きの声をあげる。
文官の一人が、うやうやしく礼をして、進み出てくる。
「申し訳ございません、本来なら昨日お伝えする筈でしたが、何故か貴方様の消息がつかめなかったので、連絡が出来なかったので御座います。」
相当嫌われているのかも知れない、国王は気がついていないが・・・文官や騎士達の中には、失笑を零している者が多い。
消息は、掴もうとすれば、掴めたのだろう・・・だが、きっとあえてしなかったのだ。
そして、そこを突っ込まれれば、ジョン自身も恥をかく結果になるような所にいたのだろう。
ジョンは、「気にしないでいい。」とだけ言って、片手をあげた。
「何か、手違いがあったようだが・・・頼む、ジョンよ・・・娘を・・・道中、危険な事もあろう、だからこそ、お主の魔法師としての力が必要なのだ。」
国王から手を握られて、そんな事を言われれば断れる筈もない。
だいたい、頼むといいながら・・・それは、王命に近い言葉だ。
断れば、反逆罪に問われかねない。
「は、はっ!お任せ下さい。必ずや、姫君は無事に魔女トラヴォルヴィッチの元へ届けてご覧にいれます。」
と、ジョンには、それしか言える台詞はなかった。
それに、魔女の弟子であるマークが現れた際の失態の数々。
不用意な言動。
そして、魔女トラヴォルヴィッチの脅しに対抗するだけの材料を用意できなかった事。
下手に残れば、叩かれる事は必至である。
こうして、マーニャの他に3人の旅の仲間が追加された。
そうしていよいよ出発となり、彼らは門の前へと集まる。
そこで、マークが目にした物は・・・六頭立ての豪華な馬車。
「・・・うぁ〜大きな馬車ぁ〜・・・・・・じゃないっ!」
「どうかしましたの?」
フィリアが、不思議そうに目を丸くして首を傾げる。
「お忍びで旅に出るのに、どこをどうすればっ、こんな王族しかのらないような馬車を用意する事になるんだよっ!」
フィリアは、困ったようにマーニャを見た。
「馬鹿な、姫様に粗末な馬車で旅に出ろとでもいうのかっ!」
そこへ、カイの横槍が入った。
「そうだよ、でなければ途中どうやって身分を隠したまま国を越えるつもりだ。一国の姫君が、そうそう理由もなしに、ほいほい他国に入れるわけないだろうがっ。」
カイは、マークの言葉に・・・うっと引く。
「それに、お前・・・その鎧を着て行くつもりか?」
「当たり前だ、騎士が鎧も着ずに戦場に立てるわけないだろうが。」
「・・・あのなぁ・・・騎士鎧を着た・・・しかも、アスリードの紋章入りの鎧を着た奴なんか、関所で通してくれるわけないだろ・・・」
頭痛いと・・・マークが額を抑えた。
「それに、姫様・・・そのドレス・・・」
「え、えっと、何か・・・」
え、私も・・・といった顔で、フィリアが答える。
「そんな豪華なドレスで旅に出たら、盗賊の格好の餌でしかないじゃないですかっ・・・もっと、普通のってゆうか、せめて宝石がついていないのとか、なかったのですか・・・」
「・・・マーニャ・・・・・・?」
「ついてないのは、ありますが・・・豪華さでは、あまり変わりませんね。」
もうやだ・・・と、マークは顔を横にふって・・・最後に肥えている中年を見た。
「で、特にあんた・・・そのいかにも魔法使いですってローブで旅をするつもりか。」
「な、なんだっ、ワシは一応気を使って地味な服装にしたではないかっ!」
元々、流浪の魔法師を名乗っていただけあり、上の三人よりは世間を知っているようだが。
「ああ、そうだな、良い生地は使っているみたいだけど・・・裁縫が安っぽいから、まだいいが。問題は、魔法使いのようなって所にあるんだよっ・・・」
「・・・・・・・・・」
「あのなぁ・・・魔女とか、魔法師とか・・・魔法を使う人間ってのは、対外の所では忌避されているもんなんだよ。迷信深い田舎じゃ、捕らえられて酷い目に合わされる事だってあるんだ・・・はっきりいって、トラブルの元だから・・・やめてくれ、その格好。」
「ぃっ!?」
そして、疲れたように・・・マークは肩を落とした。
(なんで、僕がこんな事で疲れなきゃいけないんだ・・・)
「まぁ、皆そんな事知らないようだからな・・・仕方あるまい。」
「・・・ネイさん。」
唯一人、まともな格好・・・体格や性別のおかげで目立つには目立つが、そんな不自然さはない。
普通の『傭兵』の格好だ。
「ネイでいい、その代わり私もマークと呼び捨てにさせて貰うぞ。礼儀といったものが、私は苦手でな。」
一通り、苦笑してから。
「それにな、正直ボロ馬車で旅だった所で、城下町で掴まればパニックになるだけだ。何せ、ここにいるカイは、騎士団一の伊達者であるし。姫君はよく『遊び』に出かけられているようだったからな。」
フィリアは、悪戯を咎められたかのように、顔を赤くしてそっぽを向いて。
カイは、涼やかな顔で無視をした。
「だからな、カイには鎧を脱いでもらい、姫君は・・・マーニャと同じ格好にでもなってもらうか。それで、とりあえず二つ向こうの町まで行って・・・休まず走らせれば、夜になる前には付くだろうから、手前あたりで下ろして貰おう。後は、その町で適当な馬車や必要な物を買うしかないんじゃないか?どうかな、マーク。」
「・・・・・・っま、そんな所か。」
マークは、行き成り蹴躓いた事に不安を覚えながらも・・・どうにか頷いた。
「はぁ〜・・・ナギって国ねぇ。」
「ええ、ずっと東にある国なのですが・・・そこから参りました。今回、お嬢様のご両親が、ご逝去されまして。少し遠い親戚になるのですが・・・西のボザンに知り合いがおりますので・・・」
マークは、城門の検問兵に低姿勢で挨拶しながら、状況を説明している。
「そりゃ、大変だなぁ・・・ボザンっていや、国二つは越えないといけないじゃないか。しかし、何だって歩きなんかで・・・」
「いえ、本当は馬車で旅をしていたのですが・・・この近くで、野盗に襲われまして・・・はい。町近くだと思い、油断していたようです。」
「成る程なぁ、それでその格好かい。」
包帯で、顔をぐるぐる巻きにした細身の男。
殆ど、布をかぶっているだけの肥満体質の男。
それから、侍女姿の女が二人。一人は、視界を遮るような縁飾り付きのボンネットを目深に被り、背が小さく蜂蜜色の綺麗な髪を腰のあたりにまで伸ばしている。この侍女の格好をした少女からは、どことなく気品が溢れ出ていた。
「大変だったなぁ、お嬢さん。恐くは、なかったかい?」
「い・・・いえ・・・ありがとうございます。」
少女が、恐縮したように頭をペコリと下げる。
「それで、襲われている所を・・・こちらの、戦士様に助けて頂いたわけで。」
そう言って、マークは女の戦士を紹介した。
「そ、その赤い髪に褐色の肌・・・そして、その大剣。あ、あんたっ、もしかして・・・赤雷のネイっ!?」
「ほう、私の名を知っているのか?」
「あ、ああ・・・だが、あんたは確か・・・」
驚きを隠せずに、驚愕する兵士。
「ああ、対魔女に雇われていたのだがな・・・刃を合わせる事のないままに、姫君がさらわれてしまった。」
口惜しそうに、ネイが唇を噛む。
「それで、これだ。」
そう言って、ネイは自分の首を掻っ切る真似をした。
「ひ、姫様がっ!?」
「だが、これはまだオフレコにしておいてくれ・・・城の方でも、今後の対応を決めかねているようだからな。」
「あ、ああ、わかった・・・しかし、姫様が・・・・・・」
顔を青ざめさせて、兵士は悔しそうな顔を見せた。
「その姫君のためにも、今は口を閉ざしておくんだ・・・無用なパニックが起これば、それだけ姫君を救うための行動が遅くなるからな。」
「わ、わかった・・・」
「すまんな。」
そう言って、ネイが顔を伏せる。
「な、なぁ・・・あんた、この後どうするつもりなんだ。」
「当分は、彼らの世話になろうと思っている。丁度西の方へ行きたいと思っていた所だしな。」
「あ、あんた・・・もしかして・・・・・・!?」
「ふ、私は唯彼らの護衛をするだけさ・・・無用な噂が立てば、アスリードに旅を止められかねないから、誤解はしないで貰いたい。」
「そ、そうかっ!そうだな、お嬢さんが、親戚の家へ行けなくなったら、大変だもんな。」
兵士の顔に歓喜の表情が浮かぶ。
「あんたら、ラッキーだぞ。この人はなぁ、赤雷のネイと言って。この周辺諸国で最強とも呼ばれているような人なんだ。その人が偶然通りかかって、助けてもらえるなんて・・・しかも、その一行が西へ旅するなんて・・・本当に、本当にっ・・・うっ、うっ・・・どうか、必ず無事に・・・・・・」
「泣くな、他の者が怪しむ。それに、このお嬢さんは、歩きなれてない・・・出来れば早く休ませてやりたいのだが。」
「わ、わかった、直ぐに通れるように手配する。この町には、逗留するのか?」
「いや、急ぎの旅らしいのでな・・・こちらの都合とも一致しているわけだ・・・・・・おっと、今のは聞かなかった事にしてくれ。」
人差し指を立てて、口元に当てる。
「ああっ、ならあっちの城門の奴にも話して、直ぐに立てるように言っておくよ。必ず西へ、お嬢さんを届けてくれよ。」
「ああ、承知した。」
そう言って、ネイは力強く頷くのであった。
門番に薦められた宿へと入り、室内に入った瞬間・・・全員が息を吐いた。
「・・・ああ、疲れた。」
「・・・まったくだ・・・だいたい、何故俺がこのような包帯なんぞ・・・」
マークの言葉に思わず頷きながら、包帯に手をかける。
「ああ、待て・・・この町にいる間は、包帯をとるな。お前さんの顔をしっている奴がいるかもしれんからな。」
「そうですね、カイ様の姿絵は、女性に飛ぶように売れると聞いた事があります。」
マーニャは、ネイの言葉に頷いて、その言葉を補足する。
カイが、嫌な顔で包帯を取る手を止めた。
「それにしても、流石はネイ様。まさか、ああも簡単に兵士の方を言い包められるなんて。」
「私は、少し心が痛みました・・・あんなに、私の事を心配してくれている方を騙す事になるなんて・・・」
少しだけ、落ち込んだようにフィリアが顔を伏せる。
「最初は、変装などして、何だか楽しかったのに・・・あの方との会話を聞いていたら、本当に申し訳なくて。」
フィリアは、思わずため息をついた。
「あまり気にしない事です。」
ネイが、優しく諭す。
カイが、それに続く。
「そうですよ、姫様。だいたい・・・」
マークを睨んで。
「魔女にさらわれるのは、嘘ではないのですから。」
と険悪な口調で、言葉を吐き捨てた。
「そうですね、嘘ではありませんね。魔女ではなく、弟子ですが。」
それに、マーニャが続いた。
マークは、内心暗い気分に落ち込むが、表情には出さない。
「皆さん、少し言い過ぎですよ・・・マーク様、あまりお気になさらないで下さいね。」
そう言って、フィリアがマークの手を握る。
「あ、は、はい・・・」
(な、なんだ・・・何だか妙に引っ付いてくるけど。)
顔を赤くしながら、マークは曖昧に頷く。
その姿に、ネイは苦笑しながら全員に声をかけた。
「さて、もう日が落ちているから、買い物は明日にしよう。朝一番で必要な物を購入して、出来る限り早く、この町を出る。嘘を立て並べてしまったからな、長いをして角を立てたくない。そこで、部屋割りだが・・・」
取った部屋は、3部屋。
「まず、マーニャと姫様。それから、私とマーク・・・で、後は二人で入ってくれ。」
カイは、不承不承頷く。
正直、あの肥満体と一緒の部屋は嫌なのだが・・・だからと言って、ネイと一緒の部屋などレディファーストを叩き込まれている少年には、少し辛い。
だが、何よりもマークとは嫌だ。
ならば、妥当な部屋割りだろうと思う。
不満を言えば、出来ればフィリアにもう少し豪華な部屋でとは思うが・・・それでは、いろいろ苦労してきた意味もなくなるので、その気持ちは抑える。
だが、そんな少年をよそに・・・マークが、怒りを焚きつける言葉を吐いた。
「その、部屋割りなんだが・・・」
「何か不満でも?」
ネイは、意外そうな声を出す。
多分、他の人間からはともかく、この男は大丈夫だろうと思っていたからだ。
おそらく、夜の事がなければ、マークもこの部屋割りで賛成していただろう。
だが、彼にはしなければならない事がある。
「まず、カイ・・・君。怒らないようにね。」
正直、君づけされたくないが・・・呼び捨てには、もっとされたくない。
だから、不満げに頷くだけにする。
マーニャは、流石に不安気になるが・・・このメンバーで旅する以上、あの事は話しておかないと駄目だろう。
「その・・・僕と姫様を一緒の部屋・・・っにぃ!?」
何も言わずに、カイは剣を抜刀しざまに斬りつけてきた。
咄嗟にマークは後方へ飛ぶが、脚力も部屋のスペースも足りなかった。
それを防いだのは、ネイの大剣である。
間一髪の所で、この狭い部屋の中で彼女の大剣は、カイの太刀を受け止めた。
「何をしている・・・カイ。」
ネイが、声音を抑えてカイを諌める。
「ですがっ、こいつっ・・・どこまで我々を舐めればっ・・・」
怒りの声が、室内に木霊する。
「引け・・・引かねば、斬るぞ。」
その声に込められた殺気に、カイはネイの本気を悟り・・・剣を鞘に収めて、元の場所に座る。
「・・・それで、何故なんだ。冗談としては、あまり笑えないが・・・」
「あの、それは私からご説明します・・・と言っても、私とて、大して知っているわけではありませんが。」
マーニャが、手をあげて口を挟んだ。
このまま、マークに説明を任せれば、あまりいい結果にはならないと思ったのだろう。
理由を話す、マーニャ・・・もっとも、理性も感情もあまり自分でも納得していないのだから、カイのような少年にはどうだろうと考える。
「で、その言葉を、僕達にも信じろとでも言うのかっ!?」
「少なくとも、姫様は信じておられます。」
マーニャには、例え自分の信じられない事でも、フィリアが信じているのなら・・・それで十分だった。
だが、カイはそうはいかない。
「だが、旅の間に姫を弄ぶための虚言かもしれないではないですかっ」
カイは、その視線だけで人を殺せそうな瞳で、マークを睨む。
「だったら、旅の終わりに師にでも聞いてくれ。それが嘘だったら、僕の命でも何でも、欲しいモノをくれてやるよ。」
「・・・本当だな、お前は命をかけるというのだな。」
カイが、再び剣を突きつける。
だが、ネイは、今度は止める事がわかっていたのか・・・カイの行動を止めはしなかった。
「ああ、そんな物でいいのならな。」
「・・・・・・・・・っ・・・」
一瞬歯噛みをして、剣を下げた。
カイは、ここでマークを斬り捨てたとしても、それで終わりじゃない事を知っている。
それに、自分達は、魔女トラヴォルヴィッチの脅威に、既に屈しているのだ。
これ以上制限するには、彼の魔女を打ち倒すしかない。
そして、それが出来ないから、今ここにいるのだ。
どうしようもない、無力感を感じてカイは怒りを抱えたままうな垂れた。
「それなら、それでいいだろう。姫は・・・?」
「私は、既に覚悟は決めてましたから・・・それに、この人となら・・・」
運命を受け入れるのもいい・・・フィリアは、声にださずに呟く。
それがわかったのか、ネイも静かに頷いた。
「カイには、驚きました・・・まさか、剣を抜くだなんて・・・・・・」
「それだけ、姫様の事が大事だとゆう事ですよ。」
マークは、微笑みを浮かべて彼女の髪を梳く。
「それにしても・・・変なお顔・・・」
フィリアは、そう言って笑みを浮かべる。
「仕方がないですね、僕では化粧をしなければ、他者の魔力制御なんて高等技術、使えませんから。」
「でも、私は、化粧をしてない方が好きです。」
顔の化粧で描かれた線をなぞり、フィリアは不満そうに呟く。
「はは・・・努力します。」
そう言いながら、マークは少し戸惑っていた。
フィリアが、妙に積極的に体を摺り寄せてくるのだ。
まさか、望んでいるわけでもないだろうに・・・そう考えているマークには、彼女の行動の意味が読めなかった。
(昨日の時は、あれほど嫌悪感を浮かべていた筈なのに・・・)
「どうかしまして、マーク様?」
「い、いや・・・」
言葉に詰まっていると、フィリアが上顎をあげた。
その仕草に、マークの心臓が跳ね上がる。
それでも、マークは自分の手で彼女の頬を撫でて、唇を寄せる。
彼女の方も望んでくれるのなら・・・そちらの方がいい。
(その事は、考えるのをよそう・・・どうせ、強要させてやらせている事だ。なら、出来る限り、彼女の望みどうりに・・・。)
だから、黙ってマークは、唇を重ねた。
「・・・ん・・・・・・」
唇を離すと、彼女の頬は薔薇色に染めあがる。
恥かしげに瞳を伏せた。
マークは、そのまま彼女を押し倒して・・・
「マーク様・・・」
潤んだ瞳で、マークを見つめる。
「・・・何か、あったんですか・・・・・・様子が変ですよ?」
でも、やはり気になった。
彼女の態度が、ここまで豹変している理由が・・・
「変なんて酷いです、マーク様。」
そのマークの言葉に、思わずフィリアの頬が膨れる。
「ただ・・・」
「ただ?」
フィリアの両腕が、マークの首を捉えた。
二人の顔が急接近する。
フィリアが、恥かしげな表情を浮かべる。
「貴方の事が好きになってしまったみたいです。」
フィリアは、心臓が張り裂けそうな勢いで鼓動しているのを感じた。
そのまま、マークの言葉を待つ。
だが、マークの顔には、動揺が浮かんでいた。
「姫様・・・貴方のその感情は・・・・・・」
その言葉を、フィリアは不安気な声で塞いだ。
「わかってます・・・私のこの気持ちが・・・唯好きってだけではない事にくらい、他に何か意味がある事くらい・・・。それに貴方が、義務感から私を抱いている事だってわかってます・・・・・・でも、それでもいいから・・・せめて、この旅の間くらい・・・恋の幻想に浸らせて下さい。私を騙して下さい。ずっと、そんな感情とは無縁の生活だったんです・・・でも、貴方が現れて、行き成りそんな気持ちが湧き出してきて・・・自分でも戸惑っているんです・・・あまりに急すぎるから。私、不安なんです・・・トラヴォルヴィッチ様の下に行ったら、何が待っているのか恐いんです。・・・だから、せめて・・・それまで・・・・・・」
そんな事を言うつもりはなかったのに、いつの間にか言葉にしていた。
そんな情けなさに、フィリアは涙を流す。
「私に・・・勘違いさせて下さい。」
そのまま、まわした両腕にに力を込めて抱きつく。
マークの耳元で、嗚咽が響く。
「ごめんね・・・変な事言って・・・」
マークは、泣いてい抱きついているフィリアの頭を撫でながら囁いた。
「でも、これだけは信じて・・・例え、君の気持ちがどうであれ・・・・・・僕は、フィリア・アスリードとゆう女性を義務感からだけで抱いたんじゃない。寧ろ・・・」
フィリアの腕をほどき・・・
「僕自身が望んだ事だから・・・きっかけはともかく、こうやって君を抱きしめたいとゆう感情は、フィリア・アスリードが相手だから生まれた物だから。それは、忘れないで・・・フィリア・アスリードだからこそなんだから・・・」
不必要な程の感情を込めて、マークがフィリアに囁き、唇を奪う。
舌を侵入させ、フィリアもそれを受け入れる。
「んっ・・・んん、んっ・・・ん、んーっ・・・・・んん・・・」
長い、長いキス。
舌は絡み合い、二人は互いの唇を貪りあう。
気持ちを吐露した分、フィリアは高揚していたのか・・・激しいマークのキスにも応じている。
互いが、互いを求めていた。
唇を離すと、透明な唾が糸を引いた。
「だから、出来ればずっと勘違いしたままでいてくれ・・・」
「はい。」
フィリアは、そんなマークの言葉に苦笑して・・・でも、少し嬉しそうに頷いた。
少なくとも、彼は自分の事を好きでいてくれる事がわかったから。
「んっ・・・あっ・・あん・・・服、・・・ん・・・脱ぎます・・・か・・?」
後ろから、マークに服越しに胸を触られながら、つい出そうになる声を手の甲で抑えて尋ねる。
「・・・姫様は、脱ぎたい?」
「わ、私はっ・・・その、どちらでも・・・・・・」
恥かしげに、顔を伏せるフィリア。
「でも、姫様のメイドさん姿なんて、そう滅多に見られるものじゃないからなぁ・・・僕としては、もう少し楽しみたいかな?」
「で・・は・・・この・・ままで・・・・・・んっ・・・あん・・・」
マークは、腰をお尻に押し付けて、ぐりぐりと動かす。
その行為が、まるで交尾している姿をフィリアに思いおこさせて・・・彼女の体が熱くなる。
「そっか・・・それなら、もう一つ悪のりしてみようか・・・姫様、僕の事をご主人様って呼んでもらえますか。」
「え、あ、はい・・・ご主人・・様?」
「よく出来ました。」
そう言って、マークは首筋を舐めた。
ぞくぞくっとした痺れが、フィリアの首筋に走る。
「今から、ごっこ遊びをしましょうか。僕が姫様の敬愛するご主人様、ご主人様の命には絶対服従ですよ。」
よくわからなかったが、素直にフィリアは頷く。
(メイドごっこ・・・かな?そうしたら、マーニャみたいにしていればいいのかしら・・・)
「素直な姫様って、好きですよ・・・・・・メイドに姫様は、少し可笑しいですね。」
「それに、言葉遣いも変ですよ。」
マークの苦笑に、フィリアも笑みを見せる。
「それじゃ・・・フィリア、君のご主人様は誰だ?」
フィリアの背に歓喜が走る。
「・・・フィリア?」
再び、フィリアの背に歓喜が走った。
「凄いです・・・」
喜悦の雑じった声で、そうフィリアが呟く。
「名前呼ばれただけなのに・・・こんなに、嬉しいなんて・・・・・・もっと、呼んで欲しいです。」
「じゃぁ、フィリアも・・・ね。」
マークは、くすりと微笑み、フィリアの耳元で囁いた。
「ご主人様・・・フィリアの名前を、もっと呼んでください。」
「ああ、フィリア・・・胸を触られるのは、どう?」
ぐにぐにと、脇の下から伸びた手が、フィリアの胸を捏ねくりまわす。
「いいですっ、んっ、ご主人様の手だと思うだけで・・・フィリアは、もうっ・・・」
気持ち良さそうに、フィリアはマークの手に自分の手を重ねて喘ぎ声をあげる。
「だけど、フィリアはお尻にこうやって僕のを押し付けられるのも、好きみたいだね。」
「だって、ご主人様も・・・んん・・・・・」
フィリアは、恥かしげに顔を染めて・・・ぷいっと顔を背ける。
「意地悪なご主人様は、嫌いです。」
「ふーん、じゃ・・・もっと意地悪しちゃおうかなぁ。」
マークは、そう言うと・・・フィリアの服のボタンを一つずつ外して、彼女の胸を取り出すようにして露出させる。
外気が、フィリアの乳房を撫でていく。
「あぁ・・・・・・」
フィリアは、小さく声をだしてしまう。
「敏感になってるみたいだね、フィリア。」
「だって、ご主人様に触られてますから。」
伸びてくるマークの手に、フィリアは全て身を任せた。
マークが、乳房を愛撫するたびに、フィリアの全身に甘い痺れが走る。
「あんっ、ああぁ・・・ご主人様ぁ・・・」
フィリアは、素直にマークの愛撫に身を任せているため、その与えられる快楽にも際限がない。
「いい・・・凄くいいです・・・んっ・・・ご主人様・・・・・・」
むにむにと胸を触りながら、マークはフィリアをうつ伏せに押し倒す。
それは、繋がっていれば丁度後背位のような体勢だった。
「はっぁんっ!!」
急激な体重移動で、腰が強くお尻に押し付けられる。
フィリアは、その感触に大きな声をあげた。
「ご主人様?」
マークが、突然こんな事をしたのかがわからなくて、不安げにマークを見る。
「大丈夫・・・今、もっと気持ち良くしてあげるから。」
マークは、不安気なフィリアを落ち着けようと、微笑みながら・・・胸から手を離し、スカートを捲りあげてショーツを引き下げた。
自分の恥かしい所を、堂々とマークに見られた事で・・・フィリアは恥かしさで、顔を真っ赤に染めた。
「マー・・・ご主人様、恥かしいです・・・あまり、見ないで下さい。」
恥かしげに告白するフィリアに、マークは思わず苦笑する。
自分の名前を呼びかけて、わざわざ訂正する律儀さが可笑しくてだ。
「大丈夫・・・フィリアのここは・・・」
そっと、フィリアの秘所にマークは指を触れさせる。
湿っている彼女の其処は、マークの指に愛液を少しばかり付着させた。
「とても、綺麗だからね。」
そう言って、指を動かし始めた。
ちゅくちゅくと淫らしい音が響き、フィリアの羞恥をさそう。
「あっ、あっ、だめ、駄目です、ご主人様っ!」
「そうは言うけど、フィリアの声・・・とっても、気持ち良さそうだけど?」
「そんなの・・・あっ、うそですぅ・・・・・・」
イヤイヤと顔を振る。
だが、体の芯から溢れ出るその甘い快楽は、否定できない。
「そっか・・・じゃ、もっと気持ち良くしなきゃね。」
「・・・えっ・・・?」
マークが、指をフィリアの秘所から離す。
思わず、何故と問いかけそうになったフィリアは、その事に恥かしさを覚えた。
しかし、それはマークの次の行動で全て吹っ飛ぶ。
マークの舌が、フィリアの秘唇を舐めたのだ。
「あっ、ああぁぁ!?」
マークは、フィリアを気持ち良くさせようと、秘唇をなぞるように舐めあげる。
「だめっ、だめですっマーク様っ、そんな不浄な所を・・・あっ・・・な、舐められてはっ、あんっ・・・」
されるがままになりながらも、フィリアは必至の声でマークに嘆願した。
昨日もそうだったが、排泄器官を舐められる・・・その行為には、フィリアは耐えようもない嫌悪感と羞恥を感じていた。
「おっ、お願いしますっ・・もっと、普通に・・あっ、あん・・・・・・」
「でも、とっても気持ちよさそうだよ?・・・ほら。」
そう言ってマークは、フィリアの陰核を舌で弾くように舐めた。
「ひぃあぁぁっ!!」
ビクビクとフィリアの体が痙攣を起す。
(な、何・・・今のは?)
今までとは、比べ物にならないような快感が、フィリアを襲ったのだ。
驚きと甘い疼きが、フィリアを当惑させる。
「随分と、感じていたようだね、フィリア。」
くすくすと微笑みながら、マークは再び秘唇を舐め始めた。
「んんっ、あっ、あっ、あぁぁ・・・そんな・・酷いです・・・・・・」
マークに与えられる快感に悶えながら、フィリアは泣きそうになった。
「・・・ふはぁ・・・それじゃ、これで最後ね。」
フィリアの声に流石に罪悪感が募ったのか、マークはそう言ってフィリアを仰向けにして、大きく股を広げさせた。
「・・・・・・はい。」
フィリアは、最後ならと・・・素直に頷いた。
大きく足を広げさせられて恥かしかったのだが、それも耐えた。
「フィリア・・・フィリアのここ、本当に凄く綺麗だ。初めてだよ、ここがこんなに綺麗なピンク色している女の子に出会ったのは。」
かぁーっと、フィリアの顔が更に赤くなり、顔を背けて両手で隠してしまう。
それと同時に・・・
(マーク様は、やはり他の女性と・・・した事がおありになるんですね・・・・・・)
と少し落ち込む。
彼の年から(・・・女顔であるから判り難いが、少なくとも十代の人間ではない。)考えれば、当然の事なのだが・・・やはり、少しショックだった。
彼に触れられた女性が、他にもいると思うと。
そんな事を考え、油断していたフィリアはマークの顔がフィリアの秘所に近づいている事に気がつかない。
舌が伸び、フィリアの陰核に触れる。
「ひぃあぁっ、だ、だめぇぇっ!!」
フィリアの腕が伸び、マークの頭を引き剥がそうとするのだが・・・マークの動きの方が、僅かに速かった。
マークは、吸い付くようにフィリアの陰核を口に含んだ。
吸い付きながら、舌先が陰核を刺激する。
「ひぃっあ、あっ、あっ、あっ・・・・・・」
ガクガクと体が震え、フィリアの体が痙攣を始める。
四肢の指先まで弦のように伸ばし、大きく口を空けて涎を垂らしながら、両手がシーツを強く掴みあげる。
「い・・・あっ、ああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
何かがフィリアの全身を駆け巡った。
例えようもない程の快楽と息苦しさ・・・それにフィリアは、翻弄される。
「あっ・・・あ・・・ぁ・・・・ぁ・・・・・・・・・」
ビクビクと震えるフィリア。
マークは、離れ際にもう一度、陰核を一舐めした。
「あぁっ!?」
フィリアは、苦しそうに身を反らし、うちあげられた魚のように体を跳ねさせる。
「フィリア、絶頂に達したみたいだね。」
マークは、フィリアの頬をそっと撫でながら、微笑んだ。
「あぁ・・・あ・・・あぁ・・・あ・・・・・・」
だが、フィリアにはそれに答えるだけの気力がない。
いや、もう何かを考える事だけすらも出来なかった。
行き過ぎた快感が、フィリアの思考を停止させていたのだ。
ただ、快楽の波だけが、フィリアに自分とゆう存在を認識させてくれている。
くぢゅ・・・
マークが、フィリアの秘所に指を埋める。
「ひぃぁっ!」
フィリアが、苦しげな声をあげた。
「ごめんね、少しやり過ぎたね。」
マークは、そっとフィリアの唇を塞いでそう言った。
フィリアの顔が、幸せそうに緩む。
何度か啄ばむようなキスをした後、マークはズボンを脱ぎ捨てた。
見事に勃起した肉棒が、フィリアの目の前に現れる。
だが、快楽に晒されつづけ、疲れ果てたフィリアには、何の反応も出来なかった。
マークは、フィリアの体を胸の所で跨ぎ、顔に突きつけるように自身の肉棒を近づける。
頭を優しく抱えあげて、フィリアの唇を自分のモノの近くへと誘った。
「さぁ、フィリア・・・ご主人様のモノにご奉仕して。」
そう言われても、フィリアには動くだけの気力は残っていなかった。
代わりに、マークは自分の腰を動かして、フィリアの唇を無理矢理割って入れていく。
ぬるんとした感触と、肉棒の先が舌にあたり、また別の刺激をマークに与えてくれた。
「・・・くぅ・・・いいですよ・・・フィリア。」
フィリア自体は、虚ろとした目でみているような状態なので、動きはないのだが・・・まだ幼い、それでいて清純さと高貴さを兼ね備えているような雰囲気を持つ少女が、男の肉棒を咥え込んでいる姿は、確かに辱情を誘う。
肉棒から染み込んでくるような快楽に負けて、思わず腰を激しく動かしたくなるが・・・マークは、それをかろうじて押さえた。
代わりに、ちゅぷちゅぷといった音を響かせて、フィリアの頭を軽く揺らす。
軽くフィリアの頭を撫でるように揺らすだけで、咥えている肉棒が前後して、出たり入ったりする姿は・・・激しくマークを興奮させた。
それに堪えきれず、マークは自分の分身を放出しそうになっている事に気づき、フィリアの口から肉棒を引き抜いた。
「・・・んっ・・・はぁ・・・はぁはぁはぁ・・・・・・」
肉棒に纏わりついた涎が糸を引き、雫となってフィリアの頬を汚す。
「・・・はぁ・・・・・・フィリア・・・」
体をずらし、再びフィリアの腰元へと移動するマーク。
そっと彼女の秘所に自分の肉棒を宛がう。
「ふぁっ・・・・・・」
それだけで、反応を示すフィリア。
それもその筈、フィリアの秘所はもう、華開き雫が満ちているからだ。
じゅく・・・そんな音が、聞こえた。
「入れるよ、フィリア。」
マークは、そう言うと・・・一気に体を沈めた。
「ふぁ・・・ああぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
脳天をつくような刺激に、フィリアの意識が覚醒する。
「あっ、あっ、マーク様っ・・・んんっ、ああっ・・・!」
それから、自分が何をされていたか思いだし、羞恥に染まった。
陰核をなぶられ、男の肉棒を抵抗なく口へと迎え入れてしまった事。
あまりの恥かしさに、体中が熱くなる。
だが、フィリアのそんな思考とは裏腹に、マークは腰を動かし始めている。
「いんっ、あっ、あっ、あっ・・・ふぁぁっ・・・・・・」
両腕をシーツの上につき、腰を揺らすように突いてくるマーク。
そのリズミカルな動作に、フィリアは思わず体を捩じらせ、甘い息と共にマークの名を呼ぶ。
もう、先程の事などどうでもよかった。
ただ、今は、この男のモノをもっと迎え入れたい。
「マーク様、マーク様、マーク様ぁぁ・・・」
懸命に名を呼び、マークを求める。
マークもその求めに応じるように、腰の動きを大きくさせた。
大きく限界まで引き・・・一気に沈める。
「ん・・・ああぁぁぁ・・・・・・あはぁっ!」
マークが肉棒を沈めるたびに、その先はフィリアの肉壁を抉り、子宮を叩き、甘い痺れを撒き散らす。
腰を限界まで引くたびに、フィリアは内臓を全て引っ張られていくような感覚を感じさせられ、息苦しさに喘ぎをあげた。
「あんっ、あんっ、あんっ・・・・・・」
フィリアは、喘ぎ声をあげながら、いつの間にかマークの首元に両腕をまわしていた。
彼の体温を求めるかのように、フィリアは体を持ち上げ抱きつく。
足を広げたまま、少し体を浮かしたような状態で、フィリアも腰を動かし始めた。
「ああっ、ああっ、いいっ・・・いいですっマーク様ぁっ!」
ぐちゅぐちゅぐちゅと淫靡な音を撒き散らしながら、フィリアは懸命に腰を動かす。
二人の動きは、重ね合わさり、湧き上がる快楽が倍増していく。
「あぁっ、あ、あん・・・んん・・・・・・」
フィリアは、マークを求めるように、彼の唇を求めた。
フィリアの唇が、マークの唇に吸い付き、貪るように蹂躙する。
「んっ、んっ、んっ・・・んん、ん・・・んふぁ・・・・・・」
唇に吸い付いたまま、腰を動かし、互いを求める。
「んん・・・んん・・・んふー・・・・・・」
マークは舌を口内で伸ばし、フィリアの口の中へと侵入させると・・・彼女の舌を探し出し、絡め始めた。
腰の動きも早くなる。
フィリアは、その腰の動きに翻弄され・・・
「んんっ、んっ、んっ・・・んんーー!!」
びくびくとフィリアの体が震える。
イったのだ、その瞬間彼女の膣も痙攣するように震えて、マークの肉棒を激しく締め付ける。
その締め付けに、マークも最後の時を迎えた。
熱い液体が、マークの内から解放される。
白くどろどろとした精液は、フィリアの奥を打ち付けて彼女の体の中に広がり、染み渡っていく。
フィリアの中の肉壁は、最後の一滴まで搾り取ろうとするかのように、蠢くようにマークの肉棒を締め付けていく。
「んー・・・んー・・・んん・・・・・・」
唇を塞いだままフィリアは、マークの出した精を間断なく自分の中で受け止めていた。
熱く広がる精液を、まんべんなく感じ取る。
精の存在を確実に感じた時、フィリアは熱い震えが体の芯を襲った。
うっとりと陶酔するかのように、フィリアは快楽に身を委ねて、体を奮わせた。
魔力の奔流が生まれ出でる。
体が、熱く、熱く・・・まるで、燃え上がるかのような勢いで熱くなる。
マークの放った精が、分解され、魔力となるのだ。
「あ、はぁはぁはぁ・・・ん・・・・・・はぁ・・・」
しばらくして、ようやくそれが終わる。
「お疲れ様です、姫様。」
首に抱きついたままだったので、マークの顔はフィリアの目の前にあった。
その事実に、フィリアは少し恥かしくなる。
マークは、そんなフィリアの頬に口づけをする。
「はい。」
顔を赤くして答えるフィリアに、マークは再び口づけをした。
それから、今度は唇を塞ぎ、胸に手を伸ばす。
「ん、ん・・・ん・・・・・・あの・・・」
胸を這う手に意識を取られながら、フィリアは恥かしげにマークの顔をみる。
「何ですか?」
「その・・・あっ・・・・・・まだ、するんでしょうか。」
顔が火照るのをフィリアは感じた。
こんな事をわざわざ聞く自分に。
「残念ながら、魔力を使うと体力も消耗してしまうんです・・・だから・・・」
その答えに、フィリアは安堵したような残念なような気持ちになり・・・そんな自分の考えに、また恥かしくなる。
マークの手が、フィリアのお尻へと伸びた。
「きゃぁっ・・・あ・・・・・では、なんで・・・・・・んんっ!」
まだ触りつづけるのかと、聞こうとしたら口を塞がれた。
「気持ち良くないですか?」
「え・・・・・・・・・あ、その・・・・・・」
何て事を聞くんだと、思わずフィリアは思ったが、出てきた言葉は。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・気持ち良いです。」
「キスされるのは、嫌いですか?」
「んっ・・・んふ・・・・・・・・・・・・・・・・・・好き・・・です。」
足を絡めて、唇を吸い付きあう二人。
マークの這い回る手に翻弄されて、体が再び熱くなり始めた。
フィリアは、陶然とした瞳で、マークの唇を自ら求める。
「ん・・・では、もう少し一緒の夜を・・・姫様・・・・・・もっと、気持ち良くして差し上げます。」
「・・・はい。」
絡めあう二人の体・・・今宵の夜は、もう少しだけ続くようだ。
あとがき
とゆうことで、魔女の弟子2話です!
うみ〜・・・これは、いつも一行二行くらいずつ書いていったので、既に前半の話の部分の記憶がなくなってたりして、結構大変でした。
・・・・・・それじゃ、次回はもっと大変になるような気も・・・
次回からは、冒険者っぽい事とか、ファンタジーっぽい相手とか出したいなとか思っています
って所で、それでは!
2002/9/17
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